ナッジ3 商品やサービスをデザインする-ビジネス戦略

事業計画や商品戦略を考えるときにも、ナッジの考え方は活用できる。利便性や効率性ばかりを意識すると、決められた枠の中で考えるようになってしまい、スペック以外での違いを打ち出す発想がなくなってしまう。そんな時は一度、商品やサービス使うユーザーの気持ちにフォーカスしてみよう。ユーザーが潜在的に望んですることや、魅力を感じて行動につなげるきっかけに着目することで、ユニークなビジネス戦略を思いついたり、つい使ってみたくなるような行動を変えるきっかけとなる施策が見つかるかもしれない。

 デザイン1.接点を増やす

 デジタルサービスが普及して以降、直接的な売り上げよりも、まずユーザー数を増やすことの重要性が増している。一方で、日々誕生するさまざまなサービスの中で、ユーザーの興味を引くことは簡単ではない。似た人とつながりコミュニケーションを活性化させたり、返報し合う関係性をつくったりなど、ユーザーと接点を途切れさせない仕組みを考えよう。 

デザイン2.みんなを巻き込む

 ユーザーの群衆特性を活かしてみよう。他の人と一緒だったら安心できる。みんなが関わるなら協力したくなる。といった心理を利用してユーザー同士をつなぎ、関心や安心感を相互作用で高めることができる。一方で、ユーザーの行動は完全にコントロールできないので、ある程度の例外の許容や、流れに身をまかせる姿勢も必要である。 

デザイン3.囲い込む

 ファン心理を醸成させよう。ミュージシャンやスポーツ選手を一度好きになってくれると、好きが連鎖してコミュニティの参加者が増えたり、ユーザーが自発的に応援してくれるようになる。ファン心理にはブランドの取り組みも欠かせないが、見栄を整えるよりも、距離を縮めて関わりたくなるようなユーザーの内発的な動機に着目しよう。 

デザイン4.努力に意識を向けさせる

 ユーザーの動機が内発的なものになると、愛着を持って接してくれるようになる。楽しいことや結果が嬉しいことであれば、ユーザーはそのための努力を惜しまず、自主的にやってくれる場合さえある。 

デザイン5.差別化する

 独自性を際立たせて競合との違いを出すことはビジネス戦略の基本である。利便性や効率性だけではなく、感情的な価値にも目を向けてみよう。商品やサービスが合理化という側面だけで成熟しつつあるようだったら、市場の固定概念を壊せるチャンスが隠れているかもしれない。 

デザイン6.少数派を救う

 多数派ではないユーザーが集まる場にも、市場として多くの可能性がある。少数であることを不安に感じさせず大事に扱うことで、ユーザーとの強いつながりをつくることができれば、競合に追従されない、その分野で根強い人気を獲得できることにもつながる。 

デザイン7.ストーリーで伝える

 効率性や利便性を超えた価値は、数量などの客観的データでは伝わらない。大事なキーワードは「共感」である。ユーザーの心に響かせるためには、実現したときの状態が想像できるストーリーで、商品やサービスの文脈を理解してもらうといった、人間味のあるメッセージの打ち出し方が欠かせない。 

デザイン8.ルールを変える

 優位な立場になるためには、ゲームチェンジャーになるというアプローチがある。ルールを理解した上で、ルールを変える方法を探してみよう。業界が長く保守的で閉鎖的であれば、ユーザーも業界のルールが変わることを望んでいる可能性がある。常識に捉われず、変えることでユーザーに受け入れられることと、逆に変えてはいけないことを見極めよう。