ナッジ3 商品やサービスをデザインする-場や接客

スーパー、レストラン、病院、銀行、公共施設など、特定の場所で提供する商品やサービスなどは、人を介して接点をつくる機会がたくさんある。具体的には、建物や空間などを活かした場づくり、お客様と店員のやりとり、滞在している間の時間の活用などがある。商品陳列のエキスパートや接客のプロなど優れた人のノウハウには、行動経済学やナッジの観点から多くの学びがある。もしあなたが区画やデザインに関わっているなら、現場に精通している専門家に教えを受けたり、現場を訪れて人のやりとりをじっくり観察してみよう。利便性や効率性だけでは説明できなし、行動を変えられるヒントが見つかるばずだ。 

デザイン1.特定する

 店舗や公共施設など多くの人が行き交う場所では、ユーザーは匿名性が強くなる。なので、みんなに対して声をかけるのではなく、1人の相手に声をけるようにしてみよう。そうするとユーザーとの心理的距離を、より近づけることができる。 

デザイン2.手にとって体感してもらう

 洋服や家電など、実際に触れられる商品があるならば、無意識に手にとってもらえるよう、商品の置き方を意識してみよう。欲しいかどうかとは別に、一度手に触れたらユーザーと商品の心理的距離は近づく。試食や試着などユーザーに近づいてもらう行為は、購入の大きなきっかけになる。 

デザイン3.褒めてつなげる

 店員が話しかけるとき、多くのユーザーは警戒心を持っている。安心感を醸成させるには、笑顔で相手を受け入れる姿勢や感謝の気持ちを伝えることである。ユーザーは褒められると、つい気を許して相手の要求を受け入れてもらいやすくなる。逆にかたくななときは無理におすすめしないで、気持ちが収まるまで待ってあげた方が得策である。 

デザイン4.希少に見せる

 残り僅かな商品、タイムセール、1ヶ月待った、などの希少要素は、購入や利用の意欲を高めてくれる。実店舗であれば、現地を訪れるユーザーとの関係を一期一会と捉えて「わざわざ来たかいがあった」と思ってもらえるように価値を伝えてみよう。 

デザイン5.時間を活用する

 店舗などの施設では、時間の使い方も大きく影響する。お店に入る前に条件を伝えることで、買い物誘導ができたり、時間をかけてもらうことで、元を取りたい心理にはたらきかけることができる。あるいは途中でつらい体験があったとしても、最後はハッピーエンドになるご褒美を与えることで、また訪れようという気持ちにさせるなど、いろいろ工夫が考えられる。 

デザイン6.納得してもらう

 じっくりユーザーに納得してもらうことも、ときには必要だ。理屈ではそうかもしれないけど心情的には決めきれない、という状況は誰しも経験があるかと思う。そこに話し合いの機会を設けたり、詰め寄らずにじっくり考えてもらうことで、決断と行動の気持ちを一致させることができる。気持ちと行動が不一致のままにすると不満につながり、ユーザーとのよりよい関係性は築けない。