ナッジ1 ナッジの評価方法

《チェック方法》

 2つめは、ナッジを評価するためのチェックリストである。ここでは、シンプルでユーザーの心理に直結しやすいモデル「EAST」を紹介する。EASTは、イギリスのBITBehavioral Insights Team)という機関が考えたチェックリストである。 

Easy(カンタン?)

 人は機械とは違って面倒くさがるし、ものごとを楽に解決しようとする。以前に紹介したバイアスの中では、ヒューリスティックやチヤートなどが、特にこのことに直結する。あるいはタッチ効果などの、商品やサービスに対する親しみや距離感に対する心理も当てはまる。ビジネスシーンではつい複雑に難しく考えてしまうが、ユーザーは簡単で楽にできるほど嬉しいと感じる。ユーザーに「させよう」と考えるのではなく「こんなことだったらわけない」と思えるような、やさしい方法を意識しよう。 

Attractive(ワクワクする?)

 面白さも、機械では感じられない人ならではの要素である。どんなに優れたものであっても、楽しくなければ必要最低限のことにしかユーザーは興味を持ってくれない。ゲーミフィケーションのようなワクワクさせる方法もあれば、心理的リアクタンスのように禁止に対する反動などで、興味を惹き付ける方法もある。それをナッジすることによって、いかに楽しい体験を提供できるかを意識しよう。 

Social(ソーシャル?)

 商品やサービスを提供する場所や環境を意識してみよう。ここは多くのバイアスが関係する。ピア効果、社会的選考、権威、返報性などは、相手を気遣う意識が高まる。個人ではなく集団になると、ハーディング効果やバンドワゴン効果など、社会規範の意識も高まる。さらに内集団と外集団のような距離感に対する意識も影響して、いわゆる「空気を読む」気持ちの特性も影響する。商品やサービスを使うときは、その後ろに誰かの存在を感じさせることによって、機械とは違った周囲を気遣う意識が生まれる。 

Timely(いいタイミング?)

 最後は時間についてである。現在バイアスやエンダウドプログレス効果など、時間そのものに関することや、アンカリングとプライミングなど、商品やサービスを使うときの順番や前後関係は、意思決定や行動に大きな影響を与える。加えて、ユーザーのそのときの条件や気分や決断なども関係する。ユーザーに語りかけたり、フィードバックをする時期を十分に吟味するなど、タイミングを意識しよう。

 このように、検討プロセスとチェックリストのフレームワークを使うことで、商品やサービスにナッジを取り入れるときの考え方が整理できるようになる。ただフレームワークとは、あくまでもツールの1つである。フレームワークありきで検討を進めてしまうと、枠を埋めることばかりに注力してしまい、本当にユーザーが望んでいるかどうかといった視点が欠けてしまいがちだ。大切なのはユーザーの立場から考えることである。