ナッジ1 ナッジのフレームワーク

 次にナッジをビジネスで検討するときの方法について、代表的なものを2つのフレームワークを紹介する。商品やサービスの企画のデザインをするときのプロセスや、ナッジの効果測定をするための評価指標を用いることで、計画から検証までを含めた考え方ができるようになる。 

《検討プロセス》

 1つめは、企画や開発からサービスの提供や改善を繰り返していく、検討プロセスについてである。いくつかのフレームワークやメソッドがあるが、ここではOECD(経済協力開発機構)が生み出した「BASICの5ステップ」が、とてもわかりやすいので取り上げる。 

Behavior(人々の行動を観察する)

 マスはじめに行うことは、ユーザーの観察である。利用者を起点に物事を考えないと、すぐにビジネス視点での利便性や効率性に偏ってしまう。何はともあれユーザーに着目しよう。具体的に話を聞いてみることだ。ここでは定量的なデータよりも「何でこう思ったのだろう?」といった定性的な気付きを重視しよう。 

Analysis(行動経済学的に分析する)

 次に、ユーザーの行動や気持ちから、人ならではの傾向を見つけてみよう。ここでは前に取り上げたバイアスが関係する。行動や考え方が何に起因しているのかを、行動科学に手らは合わせて分析してみよう。どうしてそういう行動や考え方をするのか、という理由がわかると、解決策のヒントを見つけることにつながる。 

Strategy(ナッジの戦略をデザインする)

 BehaviorAnalysisで、ユーザーが達成したい潜在的目的が把握できた。次にビジネス側の目的をかき出して、二重の目的を整理してみる。そして両社の目的を満たすためのアフィデアは何かを考える。解決策となるアイデアは強制や要請ではなく、ユーザーが自然に選択できるナッジによる方法を検討してみよう。 

Intervention(ナッジで介入する)

 ナッジによる方法でアイデアが見つかったら、商品やサービスのどの部分に適応できるかを考えてみよう。必ずしもお金をかければよいわけではなく、例えば伝える言葉の表現を少し変えるだけでも、ユーザーの行動に大きな変化を生み出すことが可能である。一方で、高い効果が期待されるものであっても、ビジネスを運営する上で無理のない方法を選ばないと継続が困難になる。最小の施策で最大の効果を目指そう。 

Change(ナッジによる効果を計測する)

 ナッジを適用したら、ユーザーの行動が変わった要因が何にあるのかを分析する。デジタルサービスであれば比較的データは取りやすいが、そうでなくても、接客の対応を観察したり、ユーザーに直接聞いてみるなどをして、ナッジの内容を見直してみよう。