実際に手に取ることのできる商品は、ユーザーにいろいろな感情を引き起こす機能を備えている。単にカッコいい、使いやすい、という直接的な魅力だけではなく、親しみや愛着を感じたり、使い続けることで馴染んでいく、といったことにも着目してみよう。デジタルサービスは多くの接点を持てる一方で、強い結び付きをつくることは苦手だ。対してモノは、ユーザーと物理的な濃い接点を持つことができる強みがある。人とモノの関係性を感情論の視点で考えてみると、デザインで何を重視するべきか、新しい発見が得られるかもしれない。
デザイン1.馴染ませる
独自性の強い商品やサービスに抵抗を感じるユーザーは少なくないが、一部に即視感の要素があると親しみを持って受け入れてくれるようになる。何かこれまでのものと同じような使い方であったり、昔を思いだつせてくれるものがあったり、古典的なテーマで安心して取り組めるものなどである。ユーザーが思いを入れ込めるように、少し隙間があるくらいの方がちょうどよいかもしれない。
デザイン2.身体感覚を用いる
デジタルが普及しても、モノが自分の身体や感覚にフィットするかは、ユーザーにとって代わらない関心ごとである。車の運転、スポーツ道具、PCのマウス操作など、自分の使い方にあっているほど愛着が高まる。そして、使い続けると、習熟度が上がってその分野を極める世界観にもつながり、ユーザーはそのモノを使うときの手間でさえ嬉しく感じることもあり得る。
デザイン3.ラインナップを強調する
一貫したポリシーを持っている商品や、複数並べることで魅力を高める商品は、同じブランドで集めて揃えたくなるものである。まず商品に独自性があることを際立たせて、1つの商品群の中で、共通点とバラエティの要素を両立させることが、ユーザーを囲い込むカギとなる。
デザイン4.程よい距離感をつくる
ユーザーとモノの関係は、距離感が強く影響する。友達のように近くにいると感じさせたり、反対に存在を意識させないように遠くにいて周囲に溶け込んでいる方がいい場合もある。例えば、手に取るようなものは、やわらかさや愛らしさなど生き物に近い要素が求められるが、エアコンなど直接触れ合わないものは、無機的である方が適している。
デザイン5.スペックにはない効能を伝える
利便性や効率性ばかりに目が向くと、価格や性能などのスペック競争になりがちだ。ですが世の中でヒットする商品の多くは、冒頭で紹介したAppleやSTARBACKSのように、スペックには表れない魅力があふれている。情緒的な共感や好きになってもらうための要素を、商品の外観や機能や操作性などにも取り入れてみよう。
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