所有者は他人よりも高い価格を値付けする。愛着・損失の恐れ・思い込みが保有効果を高める。保有効果はスペックを超えた「好き」がはたらく。
《行動の特徴》
人が何かを所有すると、他人よりもその所有物を高く評価するようになる。この現象を「保有効果」という。例えば、他人から見たらオンボロに見える車でも、所有している本人はあじわいがあって新車よりも価値があると思い込む。行動経済学者のダン・アリエリーは、書籍「予想どおりに不合理」の中で、保有効果の理由を3つ挙げている。1つめは、自分で持っていると惚れ込んでしまうからである。後に紹介する、触れると愛着がわくタッチ効果とも関係している。2つめは、失うことへの意識が強くはたらくからだ。3つめは、自分の考えは相手と同じだと思い込むからである。
保有効果を有効活用した例は「お試し期間」である。ユーザーは30日無料で使っているうちに、自然と自分のもののように感じ、そのまま購入につながる。試着するもの(メガネ、靴、洋服、枕など)や、サブスクリプション系のビジネス(音楽、オンライン学習、有料会員など)には、だいたいお試しがある。お試しの仕組みを入れると、ユーザーに値段への障壁を感じさせずにまず保有してもらえるようになる。
反面、ユーザー1人が保有できる量(物質だけでなくサービスも含む)には限度がある。お試し期間が終わると、自動で優良に切り替わるサービスは、お試し中でも解約のことを気にしながら使うことになる。ユーザー視点で考えると、保有へのストレスを感じさせないことへの配慮は必要である。保有効果で注意すべき点は、売買の不成立が起こりやすくなることである。不動産を例に考えてみよう。売り手は自分の家を「こんないい家なんだから」と思い、買い手は「ちょっとでもお得に買い物したい」という気持がはたらく。
このミスマッチの状況に対して、売り手は自分が過剰評価してることに気づかない。フリマ―サービスのメルカリは、参考価格を表示する機能がある。これは出品する商品に「このくらいの値段だと売れますよ」と教えることで、保有効果のバイアスを補正してくれる上、すぐ売れるという利点も提供している。保有効果をはたらかせるためには、売り手の感情にアプローチできるかが大きく影響する。ユーザーに好きになってもらうためには、数値で測れる評価から一度離れて、持ち続けたくなる要素は何かを考えてみると、保有効果につながるヒントが見つかるかもしれない。
《活用方法》
活用1.身体性が高いものにする
保有意識は、身体感覚のつながりが強く見られる。例えば、習熟度や慣れが関わる楽器やスポーツ用品、生き物のように自分の運転になじむ自動車、針に落とすアナログな行為と音が結びつくレコードなどなどは、保有効果につながりやすい傾向がある。誰でも同じように使えるのではなく、身体を使いこなす要素を組み入れると、ユーザーが愛着を待つことにつなげられる。
活用2.努力して得られるものにする
保有しているものに強い思い入れがあるときは、何かしら苦労して手に入れた場合であることが多い。例えば、入手しにくいチケットや靴、自分で組み立てた家具、トレーニングを重ねた結果の筋肉など、手を伸ばせば届きそうだけど、あえて手に入れにくくする方法も一案だ。
活用3.資格やステータスをつくる
物理的なものがないサービスの場合、証明書やステージレベルなどを設定すると、保有効果が生まれやすくなる。マイレージ会員、専門家認定証、年間パスポートなどは、資格やステータスを愛着につなげている例である。テレビゲームでも、このような仕掛けは多く見ることができるので、勉強するつもりで遊んでみると多くのことが参考になるはずである。
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