バイアス4 DIY効果(自分が関わると過大評価)

人は何かしら手を加えたくなる。最後にちょっと手を加えるだけでも愛着が生まれる。市場の効率性が成熟すると、むしろ手間をもとめるようになる。 

《買行動の特徴》

 自分がちょっとでも手を加えたものは、愛着がわいてしまう。自分で家具を組み立てるIKEA効果が代表的なので、IKEA効果とも呼ばれてするが、ここでは「DIY効果」とする。この効果はIKEA以前にも、ホットケーキミックスなどインスタント食品が取り入れていた。ただ水を加えるだけでは手拭きと思われていたけど、卵を入れるひと手間を加えた商品に変えたところ、ヒットしたものである。

 DIY効果は他にも、ミニ四駆、電動自転車、建売住宅でのカスタム要素などがある。デジタルの世界でも背景画像の設定、プレイリストの作成、アバターの作成など、いろいろな商品やサービスで見られる。自分が手を加えたものは、値段を高く設定しまう傾向がみられる。これは、愛着がわいて自分との距離が縮まって感じられる保有効果とも関係する。自分が関わったものを過剰評することで、他の意見を取り入れないといった偏見にもつながるので、注意が必要である。

 DIY効果で興味深いのは、全部自分でつくらなくてもいい、という特徴があることだ。ほとんどできている状態に対して、最後に少し手を入れるだけでもこの効果は現れる。子供向けのイベントで、既に8割できているものに対して、少し形や色を加えることで、自分が造ったように体感できるワークショップはよく見かける。ビジネスの世界でも、最後に署名やハンコを押す行為も似ている。あるいは、ずっと傍観していたのに最後にちょっと会議に出て発言したりメールを書くだけで、さも自分が関わっているようにするズルい人の行動も同じである。

 裏を返すと、どんなに苦労をかけても、最後は別の人がやってしまうと愛着が生まれない。世の中のサービスでユーザーが継続しない原因は、本人が最後の完成に関わっていない可能性が考えられる。特に子供に対しては、仕上で親は手を出さずにぐっとこらえなければならない。逆に、最後のひと手間をあえて相手にやってもらうことで、満足度を高める方法もある。仕事の場面で上司やクライアントに説明するときは、隙のない内容より、相手の意見を取り入れる余白がすこしあるくらいの方が、前向きに検討してくれる可能性が高まる。

 なぜなら本人が最後に手を入れたからだ。おそらく人は、何かしら介入がないと本人との距離感が縮まらないので、一部でも意見が反映されると身近に感じられるようになってくるはずである。DIY効果は、完成品よりも手間がかかるので、効率性を重視するような市場にはあまり適していない。逆に効率性を求めない、手間を楽しめる「衣・食・住」のような暮らし、娯楽、趣味に関するものには、DIY効果が期待できる。人は効率性を求める一方で、効率的すぎて自分が介入できる余地がなくなると物足りず、手間をかけたくなってしまうかもしれない。 

《活用方法》 

活用1.市場を不便化させる

 キャンプをしない人からすると「何でわざわざ、手間暇やお金をかけて不便なことをするんだろう?」と思える趣味が、年々賑わっている。キャンプは年々便利になっているが、道具の使い方が簡単でも自分でテントを立てられる、ご飯つくれる、焚火で薪を足せる、といった体験は嬉しいものだ。キャンプ以外にも、便利になった市場にあえてDIY要素を入れることで、新しい市場を作り出すことができる可能性はある。 

活用2.出会いに一手間を加える

 例えば観葉植物をお店で買うとき、もしその場で鉢を選んで自分で植え替えするサービスがあったら、植物とお店に対する愛着が高まるのではないだろうか。あるいは、水やりの習慣は商品とユーザーを提供することで、ユーザーとの習慣的な接点を作り出すことができるかもしれない。出会いや習慣の中で、手間と愛着を加えられる接点に着目してみよう。 

活用3.クラフト要素を入れる

 コーヒーを淹れる行為は、自動化が進んでも焙煎だったりハンドドリップだったりと、クラフト的な要素が注目されている。これまで自動化していた習慣にあえてクラフト要素を入れられないかといったことを考えでみよう。ライフスタイル系の雑誌での特集テーマを見ると、クラフト要素のヒントが見えてくるかもしれない。 

活用4.スタンプを押させるようにする

 計算ドリルなどで、問題が全部できたらシールを自分で貼るという行為は、自分が手を入れて完成させた達成感につながる。任天堂スイッチの『Fit Boxing』は、1日のトレーニングメニューが終わるとパンチで達成のスタンプが押せる。なんてことはない操作だが、これが嬉しくなる。このような、最後に自分で手を入れられる仕組みは、ユーザーのモチベーションの維持に役立てられる。