考え込むよりも手を動かして進んでいる方がやる気が出る。初動の敷居が低く成長が感じられるほど続きやすい。一方で止められなくなるリスクもある。
《行動の特徴》
「案ずるより産むが易し」といわれるように、とにかく何かやってみた方が物事は進むし、やる気もでてくる。人は「だんだん良くなる方を好む」という傾向がある。これを上昇選好という。ずっと同じ給料よりも、はじめは少なくてもだんだん増える方がやる気が高まる。このように、人は進んでいることを心地よいと感じる。質よりも量が大事であることも、進むことの効果に関係する。
陶芸の教室で、成績を質で評価するクラスと量で評価するクラスの2つに分けたところ、優秀な作品作った生徒が多かったのは、量で評価するクラスの方だった。このことから得られる学びは「考えるよりも手を動かす」「失敗を経験した方が成功に近づく」「アジャイルが大事」なのだ。進みやすくするためには、初動の敷居をなるべく低く小さくすることが大事である。誰でも経験のあることの1つに、締め切りは設定されていた方が、締め切りがないよりも早く手をつける。
自分で決める締め切りは守りにくいので、年初めに壮大な目標を立てても、3日後には忘れがちだ。目標を立てた時点では、できた状態ばかりに意識がはたらき、初動を軽視している。先延ばしするかしないかは、一度手を出すとだんだんヒートアップして、途中でやめることができなくなる場合がある。ダイエットで自制していたのに、ちょっとだけ食べてしまったが最後、タガが外れて一気に暴飲暴食に走り、むしろ状態が悪化するかもしれない。他にも、ゲームのやりすぎ、依存症、過度の干渉、ケンカ、ドロドロの恋愛など、一度スイッチが入ると「やめられない、とまらない」の状態になってしまう。
ただし、この状態の良い面もある。勉強にしろ、スポーツにしろ、趣味にしろ、何かに没頭しているときは、一番成長につながる感覚が得られルようになる。この状態は、心理学者のミハイ・チクセントミハイが提唱した「フロー体験」という。ユーザーにとってはこのフロー体験が、もっとも心地よく、自分でどんどん進んで、高いパフォーマンスを発揮できる状況だ。なので商品やサービスに対して、進むとやる気が出る仕掛けを用意することで、フロー体験につなげていけることは、ユーザーにとっても、ビジネスにとっても、好ましい状態である。
《活用方法》
活用1.はじめから進んでいる
エンダウドプログレス効果の代表例は、ポイントカードであ。入会した時点でポイントが付いたり、すでに1つスタンプが押されているカードをよく目にする。さらに、ポイント集めていく途中で中間達成ポイントがあるのも、進めたくなる動機づけになる。他にも、プロフィールの入力欄で、すでに項目が入力されていたり、該当項目のチェックがはじめからついていたり、ページを開いた瞬間にブログスバーが伸びて進んだりなど、いろいろな応用例がある。スタートの時点で進んでいると、ユーザーのやる気につながっていく。
活用2.簡単にして吐き出させる
経済学者であるダン・アリエリーの書籍『予想通りに不合理』の例によると、自動車会社のフォードは、所有者に修理点検を促すために、これまで細かく複雑だった指標をやめて、シンプルにする3つの指標だけにしたところ、多くの所有者が点検を依頼するようになったそうである。開発者視点やビジネス視点で細かくルールを作ると、ユーザーは、敷居が高かったり細かすぎると感じてやる気をなくしてしまい、行動することをやめてしまう。利用率や回収率が悪い施策は、このことが関係している可能性が高いはず。目標はシンプルに、吐き出しやすい環境を提供することが大事である。
活用3.小出しにする
ちょっとずつ進むことが大事である。一気に出してしまうと、逆効果になることがある。例えば、会社田で成績優秀者にボーナスをあげるとき、一気に昇格させたり破格の報酬を与えると、その次は、ちょっとだけ上げても効果は出ない。なぜなら、前回との比較で、上昇していないと満足できないからである。中毒状況にも少し似ている。また、まとめて一気に出すと、次回までの間隔が空いてしまい、次へ進むことを忘れてしまう。一夜漬けの勉強は次につながりにくいし、半年後の歯科検診はほとんど忘れてしまう。過度の刺激や波は与えずに、少しずつよい体験が続いている状態が望ましい。
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