今にとらわれると大事なことを後回しにしてしまう。すぐに得られる報酬があると短期的な結果を優先してしまう。近い将来に対して遠い将来は想像がしにくい。
《行動の特徴》
判断に時間の概念が加わると「今が大事か、それとも将来が大事か」といった選択肢が生まれる。夏休みの宿題や仕事など、人は大事なことがあっても目先の状況を優先しして、本来やるべきことを後回しにしがちである。このことを「現在バイアス」という。人は将来が不明確だと、すぐ確実に得られる目先のことを優先してしまう。3つの研究例からこのことを理解してみる。
1つめは、マシュマロ・テストという実験で、子どもがマシュマロを食べるのを我慢できるかを観察したテストだ。我慢できたら後でマシュマロをもう一つもらえますが、目の前にマシュマロがあると、子どもはつい手を出してしまう。このテストからわかったことは、「気を紛らわせると我慢できた」「我慢できた子は成人してから社会的・学業的に優秀だった」ということである。先の予測を立てられた方が、将来に影響することがわかる。
2つめは、お金と時間の関係についてである。学生を対象に、現在をどのくらい重視するかを調べた実験結果がある。今すぐ10万円をもらえるが、1年後に11万円もらえるかでは、今すぐを選ぶ人が多数でした。ところが、1年後に10万円をもらえるか、2年後に11万円をもらえるかでは、2年後を選ぶ人が多数だった。このことから、今か将来かでは大きな差がある一方で、将来の時間の幅に対してはあまり差を感じていないことがわかる。つまり「今かどうかが問題だ」といえる。
3つめは、動物の2つの行動パターンについてである。鳩を対象に、すぐに餌が出るボタンと、ちょっと待つけどたくさん餌が出るボタンを用意する。すると鳩はすぐ出るボタンの方を押すようになる。これはマシュマロを我慢できない子供と同じ行動である。一方、ボノボやオランウータンには、後で使う道具を補完する習慣があり、他の動物にも食糧を備蓄する行為が見られる。これは、今にとらわれず将来性を計画した行動である。この観察から、すぐ確実に得られる誘惑に対しては短期的な報酬を優先するけど、将来に関することは長期的な報酬を優先する、ということがわかる。
大人だって、報酬があったらすぐに欲しくなるもの。目の前にアイスクリームがあったら食べたいし、ビールがあったらすぐに飲みたくなる。目の前にある報酬が、今でも後でも変わらないなら今を大事にして、後々に影響するなら将来のために控えておこう。
《活用方法》
活用1.「今だけ」と「延命」を使い分ける
行動経済学者のリチャード・セイラーは、書籍「行動経済学の逆襲」の中で、スキーリゾートの経営立て直しにアドバイザーとして参画した事例を紹介する。彼が打ち出した施策は、次の2点である。1つめは、オープン前に回数券を買うと割引価格でお得になるサービスである。これは、今買って得しようという心理を利用している。2つめは、翌年の券も買ってくれたら前年分の回数券も利用できるサービスである。これは逆に使いきれない分は延命させることで、後回しの心理を利用している。
活用2.数年後より1ヶ月後を見せる
RIZAPは短期間の「2ヶ月で結果にコミットする」という広告で、注目を集めた。これがもし1年だったら印象は変わる。前の事例で紹介した、いつお金がもらえるかの実験についてでも、1年後と2年後ではなく、1ヶ月後と2年後であれば結果は変わらないはずだ。サービスの内容にもよるが、なるべく短い期間でリアリティのある結果を示すことは、現在バイアスの心理のはたらきかけに効果的である。
活用3.自分にプレッシャーをかける
TED Talkで、テレク・シヴァーズの「目標は人に言わずにおこう」というプレゼンテーションの動画が観られる。この動画は現在バイアスに関する教訓が2つある。1つめは「目標を達成したいなら人に言わないでおこう」、2めは「言いたいなら自分にプレッシャーを与える状況を作ろう」だ。話さずにはいられない場合、具体的な目標達成の指標を示して、1週間単位くらいで測定しておくと、将来のことであっても今やるべきことが意識できるようになる。
コメント