利便性や効率性は数値で測れるが、ユーザーが商品サービスに求めていることは、むしろ数値で測れないことの方が多いと言っても過言ではない。そのため、これからのビジネスでは、分析的な思考よりも仮説的な思考でユーザーの考えや行動を観察して、商品サービスの企画につなげていく必要がある。ところで、イノベーションへの関心が高さにともないデザイン思考が注目を集めるようになったのも、ユーザー視点への注目が背景にある。
デザイン思考は日本でも2010年以降、多くの学校や企業が背景にある。様々な職種や専門の人が部門の壁を超えて一緒につくる、というデザイナーの考え方を用いた方法論である。ところが、デザイン思考によって大きなイノベーションが起きたかというと、これがそうでもなかった。この原因は「デザイン思考」そのものに問題があったのではなく、デザイン思考を方法論として扱っていることが問題だった考えられる。
多くの企業や学校が、手順に沿ってフレームワークの穴埋めをすれば、自動的に解決策ができるという誤った認識で捉えてしまっていることがデザイン思考の残念な現状である。デザインに取り組む前に、まずユーザーを深く理解することから始めることが、より重要でなかったか。私たちはいつも、利便性や効率性を求めているだけではないのです。1人だと寂しかったり、褒められると嬉しくなったり、どう伝えるかによって反応が180度変わったりと、人はとても複雑でときに不合理で面白い生き物である。
まずは、対象となるユーザーへの関心を持つことがデザイン思考での基本的な姿勢である。ユーザーを理解するのには、相手の考え方であったり行動の意図や背景から気づき見つけ出す、リサーチの経験と知識が欠かせない。これは単に、観察手法のテクニックを身につけるということだけではなく、その前提にある、人の特性を知っておくことも意味する。例えば、子どもに対してゲームを禁止すると、子どもがもっとゲームをやりたくなってしまうのは、どうしてなのだろうか。
目の前で起きている現象だけではなく、人の心理状況や環境などから要因を理解する必要がある。こうしたことを知る手掛かりが、行動経済学にある。行動経済学を知ると、「どうしてユーザーはこんな行動をするのか」という問いに対する答えを、人間の特性から捉えて理解することが出来る。観察だけにとどまらず、「ユーザーが何を求めているのか」まで考察することで、利便性や効率性とは違った価値を見つけることにつながり、さらには、商品やサービスに適用するアイデアのヒントを見つけることが出来るようになる。
もしもあなたが、会社で何かの企画やデザインに関わっていて、イノベーションを起こすことが求められていたら、行動経済学がきっと役立つはずです。これからのビジネスで必要なことは、フレームワークを使ったデザイン思考ではなく、ユーザーへの関心と、ユーザーを観察して理解をしようとする姿勢である。
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