パワーマネジメントとは(1)

《組織と人材マネジメントにおけるパワーとは》

 組織と人材マネジメントにおけるパワーとは何かについて考えて見よう。企業組織においてリーダーは、業務の目標達成のためにリーダー一シップを発揮して組織を牽引しているが、その際にリーダーシップだけでないパワーが必要となる。ここでいうパワーの例としては、相対的な地位に由来する権力、知識や報酬を与えることができる能力、メンバーに対して恐怖心を与えることができる能力、みんなに好かれていることなどが上げられる。

 これを整理すると、組織と人材マネジメントにおけるパワーとは次の4つに集約することができる。 

1)  賞罰:メンバーの年収や出世について影響を及ぼす力を持つ人が、メンバーについて権力を行使できるもの 

2) 正当化:個人的な損得勘定ではない納得性からくる権力。「代表取締役の命令なので従って当然」と思わせる力 

3) 同一化:心理的に一心同体となることで発生する権力。「この人のためなら休日出勤もいとわない」と思わせる力 

4) 情報:専門的な知識や優れた情報を持っていることを基盤とした権力 

 これらのパワーについては、リーダー一人だけに集中しているわけではなく、組織内を分散して存在している。例えば、特定の業務に関してリーダーよりも高度な専門知識を持ったメンバーは、その人にパワーがあることを周囲の人は認識する。このようなパワーは組織内で分散しているのだが各人が自分の目標達成のためだけにパワーを用いるようになってしまうと、それは組織内での政治活動となり、そのメンバーが所属する組織やグループにとって好ましくない状態に陥ってしまう。

 その一方で、組織内のパワーが適切に分散していると全員参加型の組織運営も可能となる。このようなプロセスは、パワーを握っている人が自分以外のメンバーに対してパワーを分け与える「エンパワーメント」を行うことによって達成される。しかし全員参加型のグループを運営する能力のないメンバーに対応してエンパワーメントを行ってしまうと、そのまま組織にとってのリスクとなってしまう。