リーダーシップ理論(2)

《リーダーシップに関する理論》

 リーダーシップに関する理論については、アプローチの仕方によって次の3つの理論(「リーダーシップ特性論アプローチ」「リーダーシップ行動論アプローチ」「リーダーシップ状況論アプローチ」)に大別することができる。 

1) リーダーシップ特性論アプローチ

 リーダーシップ特性論アプローチとは、優秀なリーダーとは一般的な人々とは異なる優れた個人的特性を持つという考え方と、リーダーシップの有効性はリーダーの個人的特性によって規定されるという仮説に基づくものである。このアプローチについては、1930年~1940年にかけて多くの研究が行われた。その結果、優れたリーダーの持つ個人的特性として以下のようなものがリストアップされた。 

  1. 知性:学識、判断力、想像性
  2. 行動力:判断力、協調性、社交性、適応力、達成志向、忍耐力、信頼感:自信、責任感、地位  

 しかし、これらの研究において優れたリーダーの持つ個人的特性を特定化するまでには至らなかった。それは、優れたリーダーに求められる個人的特性は、集団や組織のタイプやその時々の状況によって異なっているためであると考えられ、「リーダーシップ行動論アプローチ」へと研究は進んでいった。 

2) リーダーシップ行動論アプローチ

 リーダーシップ行動論アプローチとは、優れたリーダーシップを発揮する人とそうでない人との間で行動のパターンが異なっているのではないかという仮説に基づくものである。このリーダーシップ行動論アプローチにおける代表的な理論は、次の2つの理論である。 

  1. マネジアルグリッド理論
  2. PM理論 

 マネジアルグリッド理論では、「構造づくり」「配慮」という2つの軸に基づいてリーダーシップに関する行動の分析を行う。構造づくりとは、メンバーに対して仕事を割り振り、業績水準を明確に示し、社内規則や手続きに従うことを求められるような「生産指向」の行動を指す。一方の配慮とは、メンバーに対して関心を示し、意見を求めたりメンバーの相談に乗ったりして、メンバーの行動を支援するような「従業員志向」の行動を指す。

 行動の分析にあたっては、縦軸に従業員志向に関する関心の度合いが、横軸に生産性志向に関する関心の度合いが、それぞれ9段階に分けて示され、両方に対して最も関心の高い「99型」が最も有効なリーダーシップであるとされている。PM理論では、「課題遂行(Perfomance)」と「集団維持(Maintenance)」の2軸に対して高低の2段階を組み合わせて4つのタイプを定義し、この2つの軸が両方とも高い水準にある「PM型」のリーダーシップの下では、組織の生産性や満足度が最も高くなることが実証的に明らかにされている。 

3) リーダーシップ状況論アプローチ

 リーダーシップ状況論アプローチとは、メンバーのそれぞれの状況に応じてスタイルを変更していくものである。状況論アプローチで代表的なものがフィドラーのコンティンジェンシーモデルである。フィドラーのコンティンジェシーモデルでは、リーダーシップの特性を「一緒に働くのが一番嫌いな人(LPCLeast Prefferd Coworker)」の概念を用いて分類する。

 リーダーにLPCに該当する人を評価してもらうことで、「LPCスコア」を入手する。このLPCスコアが高いリーダーは、嫌いな同僚であっても好意的な評価を行っていることから、「人間関係思考」が高いリーダーであるということができ、逆にLPCスコアが低いリーダーはいやな同僚を否定的に評価し仕事に感情を持ち込まないことから、「仕事への志向」の強いリーダーであるということができる。

 状況に関する要因としては、「リーダーとメンバーの間の信頼関係「仕事の構造化」「リーダーの職以上のパワー」という3つの要因から規定される「状況の好意性」の概念が用いられる。リーダーとメンバーの間の信頼関係が強く、高度に仕事が構造化され、リーダーの職以上のパワーも強いという「状況の好意性の非常に強い」状況と、逆に「状況の好意性が非常に強い」状況においては、「仕事志向」のリーダーが高い成果を揚げ、状況の好意性が中程度」の状況では「人間関係志向」のリーダーが高い成果をあげると言われている。

 リーダーシップについては、個人的特性に着目したものから状況への適応に着目したものへと変化してきた。リーダーが組織においてリーダーとして機能するためには、リーダーにつき従うフォロワーの存在が不可欠である。個人としてどんなに仕事で高い業績上げることができたとしても、リーダーとしての存在を認めてくれるフォロワーがいなければリーダーとなることはできない。そのためにメンバーとの間の信頼関係を強化し、状況に応じて適切なリーダーシップのスタイルを取ることができるようにしていく必要がある。