ここでは、組織の「コンティンジェンシー理論」と組織構造を変更することが企業経営に対して与える影響について考えて見よう。
《コンティンジェンシー理論》
企業組織のとるべき組織構造は、企業の成長ステージやその時々で企業が選択する経営戦略や企業を取り巻く経営環境の変化に応じて、柔軟に変更していくべきものである。このような考え方に対応する理論が、コンティンジェンシー理論である。コンティンジェンシー理論は、日本語に訳すと「条件適合理論」となる。このコンティンジェンシー理論とは、「どんな企業にも幅広く当てはまる最適な組織構造というものは存在せず、企業は様々な要因に応じて組織構造を考え、見直していかなければならない」という考え方で、1960年代に出てきた考え方である。
例えば、変化の激しい環境におかれている企業と、あまり変化のない環境で事業を行っている企業とでは最適な組織構造は異なってくるというものである。「コンティンジェンシー(contingency)」は、「条件付けられた」という意味である。つまり、最適な組織構造とはどのような組織構造か?」という問題意識で組織構造の研究が進められてきた。しかし、「ベストな組織構造は置かれている状況によって異なる」ということが定量的に実証されるような研究が行われ、コンティンジェンシー理論という考え方が登場してきたのである。
なぜ置かれている環境によって最適な組織構造が異なってくるのかを明らかにした経営学者がサイモンである。サイモンは組織を「情報処理メカニズム」ととらえ、環境が異なると処理すべき情報量も異なってくるため、当然最適な組織構造も変わってくると考えたのである。
《組織構造の変更が企業経営に与える影響》
企業組織の組織構造は、取り巻く経営環境の変化に応じて変更していくべきものであるとして、企業組織の経営戦略に対してどのように影響していくのだろうか。経営学者ラリー・E・グレイナーによると、企業組織は、成長フェーズ(既存の経営戦略システムが成長に大きく寄与する時期)と変革フェーズ(既存の戦経営戦略や経営システムが機能不全の状態に陥り、何らかの手を打つ必要がある時期)のどちらかの時期に属している。
組織構造の変更(例えば、職能別組織から事業部制組織に移行するなどの大きな変更)を行うことは、グレイナーの言う変革フェーズを迎えた企業が、新たな成長フェーズへ向かうために検討すべき重要な方策を考えることができる。これまでの日本企業の組織構造を見てみると、多くの企業では組織構造を変更することに対して臆病になっているとおもわる。あるては、組織構造の変更が経営戦略に対して与えるインパクトを過小評価していたのかもしれない。
組織構造の変更を行うことによって、組織メンバーの考え方や行動パターンに対して揺さぶりをかけ、企業組織の属するフェーズに移行させ、そして新たな成長フェーズへ導くことができるのである。企業組織自体の発展のために、日本企業においても組織構造の変更を戦略的に活用してもよいのではないかと考えられる。コンティンジェンシー理論によれば、企業組織のとるべき組織構造は、企業組織自身の置かれている状況に応じて変わってくる。組織構造を環境に応じて柔軟に変更していくためには、自分たちの組織を取り巻く環境変化を敏感にとらえていくことが求められる。