4.マトリック組織
マトリック組織とは、機能別組織と事業部組織のそれぞれの持つメリットを同時に実現することを目的として、それらの組織構造を組み合わせた組織構造である。例えば、機能と製品という2つの軸を持つマトリックス組織であれば、機能別組織のもつ専門性の向上というメリットと、製品別事業部の持つ環境適応性や顧客適応性といったメリットを同時に実現勝とするものである。マトリックス組織の特徴は次の3点がある。「事業部組織と機能別組織を統括する組織が中央に存在する」「1人の担当者が事業別組織と機能別組織の両方の機能を求められる」「1人の担当者が、事業別組織と機能別組織の2人の上司から指示命令を受ける」。
ただし、マトリックス組織には次のような問題点がある。「指揮命令系統の二重化により、系統間の調整や対立が発生し、結果的に意思決定や戦略実行が遅くなる」「間接費が増大する」「管理者間の権力闘争の激化」。このような問題点への対処方法としては、2人の上司のうちどちらかに強い権限・責任を与えるというもので、例えば、機能別組織をベースとして製品別の管理者に各機能間のコーディネートを担当させるケースや、製品別の事業部制をベースにして、機能別の調整役に製品間のコーディネートを担当させるようなケースがある。
5.チーム制組織
これまで述べた組織構造は固定的で安定的な組織構造あるといえるが、最近ではある目的のためだけにチームを形成する場合が増えている。このチームが企業経営上で重要な役割を担うことが増えてきている。このチームは、「プロジェクト・チーム」や「タスク・フォース」と呼ばれている。「プロジェクト・チームには次のような特徴がある。「少人数で特定の目的を達成するために作られる」「一般的に目的を達成した時点で解散する」「メンバーは特定の部署に所属しており、チームのために召集される」などである。
このプロジェクト・チームには、所属部署を一時的に離れて・プロジェクト・チームの仕事に専念するケースと、所属部署の仕事を行いながら、必要に応じてプロジェクト・チームの仕事を行うケースがある。このプロジェクト・チームは次のような状況下でその特徴を発揮する。「市場動向の変化が激しく、既存の組織体制では対応できない事業がある場合」「問題解決のためのスピードが優先される場合」「イノベーティブな製品やサービスが優先される場合」などである。
プロジェクト・チームのメンバーは様々な部署に所属していることが多いため、多様な視点から事業を検討することができる。そのような多様な背景を持つメンバーが、組織の壁を超えて協力関係をつくることができるため、画期的なアイデアが生まれたり、優れた仕事の進め方を発見することもできる。また、少人数であるため、意思決定もスピードアップが可能である。
このようなメリットを享受するためには、リーダーの育成やチームメンバーの構成、マネジメントからの支援や権限委譲が重要なポイントとなる。チームを構成するメンバーの能力は補完的なものであることが望ましかったり、リーダーには多様な意見をまとめ上げる力量が求められる。そして、チームが目的の達成に向かうプロセスの中で、仕事がしやすくなるようにマネジメント層には様々な面での支援が期待される。
このチーム制組織を定常的に採用しているのは、コンサルティング会社や法律事務所などの組織である。これらの企業組織では、プロジェクトの内容に応じてメンバーを選び、最適なチームを構成して業務を進めていく。このチーム組織の中で、最も成功した例として典型的なものは、日産自動車でカルロス・ゴーン氏が主導した「日産リバイバルプラン」策定に際して、実行主体となったクロス・ファンクショナル・チーム(CFT)である。
日産でクロス・ファンクショナル・チームが導入された背景としては、社内で「顧客志向」の考え方が弱くなり、重文の部署の都合が優先されるセクショナリズムが蔓延していたという面がある。このクロス・ファンクショナル・チームは、日産社内の若手・中堅幹部を中心に組織横断的なプロジェクト・チームとして結成され、「事業の発展」「購買」「製造・物流」「研究開発」「マーケティング・販売」等のテーマについて検討し、解決策を経営陣に対して提案していったものである。
クロス・ファンクショナル・チームを導入することによって、部門間の壁を打ち破り、顧客のための企業組織として本当に対応すべき内容を議論できるようにしたものである。約3ヵ月間の活動期間中に2000件ものアイデアが検討され、それらは日産リバイバルプランとしてまとめられた。その日産リバイバルプランを実行した結果、日産自動車は1990年代からの業績不振から脱し、「V字回復」とも呼ばれる急激な業績回復を成し遂げることができた。このような成功例を受けて、公式的にチームを組織構成する基本単位とするチーム制組織の組織形態を取る組織形態が増えていった。