人事システムの設計-(1)全体像とその目的

《人事システムの全体像》
 人事システムを設計するには、まず、人事システムの全体像とその目的を理解することが肝要である。そこでまず、人事システムの全体像をみてみよう。人事システムは、次の5つのサブシステムから構成されており、それぞれのサブシステムの主要な課題は以下の通りである。

(1) 採用システム:どのような人材を採用するのか
(2) 配置システム:採用した人材にどのような仕事を与えるか
(3) 評価システム:組織メンバーの能力や成果をどのような基準で評価するか
(4) 報酬(報奨)システム:評価結果に基づいて組織メンバーに給与等でどのように応えるのか
(5) 能力開発システム:業務遂行のために組織メンバーの能力をいかに開発していくか

 人事システムは、上記5つのサブシステムが協働して機能することにより、経営戦略の実現に貢献しているわけである。

《人事システムの目的》
 人事システムの主要目的は、「経営戦略の実行を推進する」「長期的に人材を育成する 」の2点が挙げられる。

(1) 経営戦略の実行を推進する
 トップ・マネジメントにとっての重要な仕事は、組織メンバーの意識を一定の方向に向けさせ、共通する組織の目的を達成できるように行動を起こさせることである。マネジメントは、そのために様々な制度や施策をつくっていくが、それらの中でもとくに重要な役割を果たしているのが人事システムである。経営戦略の実現のための人事システムに関連する制度や施策としては、大きな施策から小さな施策まで様々なものが考えられる。
 大きな施策の例としては、例えば地方へ事業を全国展開するために営業力を強化しようとした時に、中途採用の人数を増やしたり、採用説明会を増やしたりという施策が考えられる。全般的な営業力の強化のために、営業成績との連動部分の割合を高めるように報奨制を変更するという施策も考えられる。全般的な営業力の強化のために、営業成績との連動部分の割合を高めるように報奨制度を変更するという施策も考えられる。
 小さな施策の例としては、組織メンバーのモチベーションを引き出すために、日常的なコミュニケーションの取り方・頻度を変えてみるというケースが考えられる。このように、組織構造に変更を加えたり、人事システムを工夫するなどして、マネジメントは様々なレベルから組織メンバーの行動をコントロールしようとする。その目的は、経営戦略を実行に移し、実現していくことにある。

(2) 長期的に人材を育成する
 企業を取り巻く環境は常に変化しておりそのスピードも速いが、一方で組織メンバーは一度その組織のメンバーになると、長期間在籍することの方が多いようである。特に日本企業では最近、その傾向も薄れてきているとは言え、「終身雇用」という言葉通り新卒で入社した企業組織に定年まで30~40年の間、勤め続けるという人が多く存在する。その間、経営戦略は経営環境に合わせて、適宜変更が加えられていく。
 つまり、ある特定の戦略の実行にのみ適した人材を採用することにより、その戦略が変更になった時には、戦略と人材のミスマッチが発生してしまう。そのため、経営戦略と人材の関係性は固定的と考えるべきではない。当然短期的な視点で経営戦略を実行する能力のある人材を採用、あるいは育成していくことは重要だが、同時に長期的な視点で企業組織の将来を担うような、新しい戦略を構想・実行していく潜在能力を持った人材を採用することも必要である。
 特に、長期的な視点で組織の将来を担うことのできる人材を確保し、活躍の場を与えることができれば、その企業組織が将来も存続していく可能性は高まって行くことになる。つまり、人事システムには短期的には戦略遂行力を高める人材の確保、長期的には戦略自体を構想できる人材の確保という2つの視点が必要となる。企業組織が将来にわたって存続し続けていくには、自律的な行動・判断ができるマネージャーを長期的に育成していくことが人事システムの運用における大きな目標となる。
 人事システムの運用において特に注意が必要な点としては、人材の教育・育成は能力開発システムだけに依存するのではなく、その他のシステムにも依存する。例えば、配置システムを通じて、その人材に対してどのような仕事を割り当てていくかも、人材育成にあたっては大きな影響を与える。また、評価システムの中に能力開発の視点を盛り込むことによって、組織メンバーの成長は促進される。