組織構造モデル-その2(事業部制組織)

2.事業部制組織

 事業部制組織とは、本社の下に事業ごとに編成された組織(事業部)がぶら下がる形で編成された組織構造を言う。事業部制組織を構成する各事業部は、その組織が生み出すアウトプットに焦点を当てた組織で、製品・市場・顧客・地理的立地条件等を基準にとして決められる。事業部制組織では分権化によって、事業部長レベルでかなりの経営判断が行われるため、意思決定のスピードアップを図ることができる。

 事業部制組織ができてきた背景には、企業組織が成立する過程で新しい事業分野や新規市場に参入するなどして大きな組織となり、本社においてすべての経営判断を行って行くには非効率であるという点がある。この事業部制組織としいう組織構造をとる場合、どのようなメリット・デメリットがあるのかを見てみよう。

メリット

1) 事業ごとの責任が明確になる。

2) 事業単位での意思決定が容易になる。

3) マネジメント・スキルを持った人の育成ができる。

4) 事業部門での競争が期待できる。

5) 機能別組織に比べ、吸収・合併等に対応しやすい。

 上記のメリットのうち、1)3)は分権化されていることによるメリットと言える。事業部制組織においては、分権化されていることにより、事業ごとの責任が明確になる。このことにより、問題が発生した場合に問題解決のための対応を迅速に行うことができる。また、分権化により、事業部長に大きな権限が委譲されているため、意思決定プロセスが簡素化され、意思決定が容易になる。そして、分権化されていることにより、管理職が早い段階から幅広い意思決定を任されることにより、マネジメント・スキルをもった人材を育てることができる。その一方で次のようなデメリットもある。

デメリット

1) 事業部門の垣根が高くなり、協働しにくい。

2) 事業部門で経営資源の配分がしにくい(経営資源を巡って社内競争が発生する)。

3) 各事業部が経営機能を重複して持つため、経営資源面に無駄が生じる。

4) 短期の利益志向が強まり、中期的な施策が打ちにくい。

5) 事業部門での人事交流が少なくなり、組織が硬直化しやすい。

 事業部制組織においては、上記のようなデメリットを緩和する意味もあって、各事業部を統括する本社機能(本部機能)がある。本社機能では、各事業部の業績評価や企業全体の戦略コーディネーターといった全社統括機能に加えて、研究開発、法務、財務といった専門職機能を担うこともある。この本社機能によって全体の最適化が図られる。また、事業の幅が広く事業部の数が多くなってしまった場合には、事業部をグループ化してその上に事業本部を置いて「本社-事業本部-事業部」という構造にし、本社機能のうち、事業部の統括や研究開発を事業本部に任せるというやり方もある。

 各事業部の担当事業の分け方であるが、代表的なものとして「地域別」「製品別」「顧客別」という基準がある。一般的に多用されているのは、「地域別」「製品別」の分け方だが、近年は「顧客別」で分ける方が増えている。例えば、顧客企業ごとに異なるコンピュータ業界では「製品別」「地域別」に事業部を分けることが多かったが、事業自体がコンピュータそのものを売ることからコンピュータを活用したソリューションを提供することに主眼が移っていったのに対応して、顧客別(業界別)の事業部制をとることが増えてきている。

 このような事業部制組織を採用している企業にはどのような企業があるだろうか。事業部制組織を採用している企業の特徴としては、食品、自動車、電機等の多数の製品を抱えている大きな企業であるという特徴がある。事業部制組織を採用している企業の例としては、松下電器産業(現Panasonic)がある。松下電器産業では、1933年にラジオ部門を「第1事業部」、ランプ・乾電池部門を「第2事業部」、配電器具・合成樹脂・電熱器部門を「第3事業部」として、事業部制組織を導入している。

 その他の導入企業の代表的な例としては、日本企業では神戸製鋼や積水化学、三菱電機があり、アメリカの企業では、GM(ゼネラル・モーターズ)やGE(ゼネラル・エレクとリック)、デュポンなどがあるが、現在では多くの上場企業において採用されている。