トヨタ自動車の組織文化

 トヨタ自動車の組織文化を表すものとして、「豊田綱領」「トヨタ基本理念」「トヨタウェイ2001」が作成されている。これらに記載されている内容をまとめると、トヨタ自動車の組織文化には、「車づくりを通じた社会貢献(地域・社会の豊かな生活と発展)」「人間尊重(お互いの信頼と尊重及び1人ひとりの成長)」という2つの考え方があるといえる。トヨタ自動車の組織文化の基盤となる「社会貢献のための付加価値の創造」は人の手によるモノづくりを通じて行われます。

 そのモノづくりのための方法や機会を創り出していくのは、人の研究と創造や知恵と工夫にあると考えられる。どんな立派な建物や設備があり、十分な材料がそろっていたとしても、人がそれを使いこなすことにより良い製品を作ることができなければ意味がない。このように付加価値を想像して高めていくのは人の働きによるものである。また、人こうして付加価値の創造による社会貢献のプロセスを行うことによって、自分の能力を高めて成長するとともに、生きがいや喜びを高め豊かな生活を獲得することにつながる。

 「人づくり」こそが企業の競争力そのものであり、それを継続的に高めることが企業の成長力となり社会の発展につながると考えられている。そのため、原則的に一旦採用した社員は定年になるまでの雇用は維持されるため、社員は失業の不安から解放されて、会社への強い信頼感と長期的視野の下に、他のメンバーとともに腰を据えて仕事に取り組むことができる。このようにトヨタの組織文化は、GMとの合弁でアメリカに作られたNUMMIの工場でも受け入れられることになった。

 現場のアメリカ人社員もトヨタ生産方式を学び、それを実践していったことにより、日本の工場と変わらない生産性を実現することができ、「NUMMIの奇跡」と呼ばれている。アメリカの生産現場では、マニュアル通りの作業が求められ、それができない人材であれば、代替えはいくらでもいるという考え方が通常だった。それに対して、トヨタでは生産現場の人間も1人の人間であり、かけがえのない存在であると考えられ、熱心な社員教育が行われている。

 そしてトヨタの長期雇用維持の原則は、不安定な雇用の下で働いてきた工場作業員たちにとって大変な朗報であり、会社に対する深い信頼感の基礎となった。その結果として、アメリカ人作業員たちも熱心に仕事に取り組み、生産性を向上させることに成功したのである。しかし、このトヨタの組織文化は合弁先であるGMには受け入れられなかった。アメリカでは、生産現場のブルーカラーの工場作業員と、本社で働くホワイトカラーの従業員の間では、仕事の仕方や処理内容で明確な格差があり、ホワイトカラーの従業員は優遇されていた。

 そのため、トヨタの組織文化にある人間尊重による平等主義を受け入れることができなかったのだ。その後、GM本体は経営不振となり、経営破綻に至ったのは皮肉なものと言えるだろう。以上、組織文化について見てきたが、組織文化は創業者の意志や想いをベースとしてスタートし、トップ・マネジメントの行動や採用・評価といった社内制度などによって強化され、組織メンバー内での共通の価値観や判断基準となっていく。

 良き組織文化として組織メンバーへ浸透すれば、企業組織を良い方向に導くことが可能となるが、環境の変化に適応できずに悪しき文化となってしまい、企業の存続を危うくしてしまうこともありえる。このような観点から、現在所属している組織内で共有される価値観とはどのようなものか、その価値観がメンバーに対してどのような影響を与えているかを一度見直してみるのもいいだろう。