これからの評価制度に必要なものは(その4)

(7)成果主義のデメリット

 このように多くのメリットのある成果主義ですが、デメリットもあります。ここでは、成果主義のデメリットを考えて見ます。

①個人の評価を気にする人が増えていく

 成果主義は、成果が評価に直結します。そのため、自然と個人の評価を気にする人が増えていく可能性があります。結果、個人での働きが活発になり、年功序列や終身雇用では重視されていたチームワークが希薄化してしまいます。例えば、ノウハウやナレッジを周囲と共有せずに、一人で抱え込んでしまう社員も出てきてしまうかもしれません。

②評価されない仕事をやりたがらなくなる懸念がある

 社員が、高い評価を出すことに目が行き、評価に直結する仕事のみに注力してしまう可能性があります。組織である以上、成果に直結しないけれど、重要な仕事は多々あるでしょう。成果主義が行き過ぎた結果、成果に直結しない仕事に、社員が消極的になってしまう場合があります。

③結果がすべてという考え方になり、プロセスを軽視してしまうリスク

 結果にこだわることで、プロセスが重要視されなくなる可能性もあります。「結果さえ出せばよい」という大義名分のもと、むりやり業務を行い、ユーザーや顧客に迷惑をかけたり、クレームが多発してしまう事態も考えられるでしょう。

④厳しい競争が生まれるので定着率が低くなる

 昇給や昇進をするためには、成果を出すことが必要です。一方で、成果を出せない場合、会社に居づらくなり、離職に繋がってしまいます。また、たとえ成果を出せている場合であっても、会社からの要求も比例して高くなっていくでしょう。会社からの要求について行けなくなることによる離職も、発生してしまう可能性があります。離職が発生することで、残された社員のモチベーションに影響します。結果、また新たな離職が出てしまうなど、対策なしに導入すると、負の循環に陥ってしまう可能性もあります。

(8)日本に成果主義が根づかなかった理由

 成果主義が日本で注目を浴びるのは、ここ数年のことではありません。例えば、1990年にも、多くの企業で導入を検討する動きが起きました。しかし、ほとんどの企業では、定着しませんでした。なぜ、定着しなかったのでしょう?長らく続いた年功序列から、急に変更しようとしたため、社員になじまなかったこともありますが、他の要因もあります。

 大きな要因は、成果主義を結果主義と捉えて、プロセスを評価してこなかったことです。プロセスを見ずに、結果だけを評価してしまい、息苦しさを感じる社内環境になってしまったのです。また、ノウハウやナレッジを抱え込むなどの個人での動きも増えてしまい、社内の雰囲気もよくありませんでした。結果的に成果主義は定着せずに、年功序列型に戻っていった企業が多くありました。

(9)成果主義を導入するポイント

 上手に活用することで、社員にとっても、会社にとっても、大きなメリットのある成果主義。一方で、導入の方法を誤るとデメリットも大きくなってしまいます。だからこそ、導入する際のポイントを押さえておく必要があります。導入を検討する場合、まず評価基準を明確にしましょう。具体的に、どの程度達成すると、どのような評価になるのかを考えて行きます。

 その際に、プロセスも評価基準に組み込むことが大切です。結果は出せなかったものの、プロセスは達成できたと評価することができ、社員のモチベーションアップにつながります。そして、定めた評価基準を把握することで、成果を出すための正当な努力の方向性が分かり、納得感を持つこともでき、更にやる気も出てくるでしょう。成果主義が定着している海外諸国においても、成果とプロセスを見ることが主流になっています。

(10)評価制度を見直す時期が来た

 ここまで成果主義の仕組みやメリット、デメリット、導入する際いのポイントなどを見てきました。日本における主流の年功序列は、高度経済成長期に最適とされたものであり、今の時代に即した評価制度に見直していくことが求められています。しかし、ただ単に成果主義を導入すればよい、という訳ではありません。成果主義も、結果主義も、年功序列型も、全ての評価制度はあくまで「手段」です。大切なのは、「目的」。

目的とは、企業にとっては、掲げているビジョンの達成であり、業績向上です。評価制度とは、あくまで目的を達成するために、社員が活躍できる環境を整える手段。つまり、最適な評価制度とは、目的や現状・社風などによって、会社ごとに異なってくるのです。新型コロナウイルスの影響もあり、社会全体として変わることが求められている状況下で改めて目的を考え、自社にとって最適な評価制度を考えてみるのがよいと思います。