MECEの7つの切り口:分割・尺度によるMECEの切り口

《分割によるMECEの切り口》

分割によるMECEの切り口では、「全体を境界線で3つ以上に分割する」ことでMECEを実現することができる。この分割によるMECEの切り口は、先ほどの二項対立の発展系ともいえる。また、類似性によるMECEとも似ているが、こちらは初めから共通した特徴をもっているところが違う。「地域の分割」「空間の分割」「部品の分割」などがイメージしやすいかもしれない。

 この分割の切り口は、「全体を分割するだけなのでモレがない」「境界によって分割されるのでダブリがない」ことになる。コンビニを例として「出店エリア」を分割の切り口でMECEすると、「北海道」「東北」「関東」「中部」「近畿」「中国」「四国」「九州・沖縄」という八地方区分などが考えられる。他にも都道府県で分けてもMECEになる。また、コンビニの店内売場合でも、「レジ横」「雑誌・書籍棚」「ベーカリー棚」などなど、空間エリアごとに個別の名前をつけて分割することもできる。

 さらに、一帯となっているものを部品や部分に分けることも考えられる。コンビニのレジスターなら、「客側モニター」「店員側モニター」「ハンディスキャナー」「1Cカートリーダー」「自動釣銭機」「レシートプリンター」などなど、パーツに分けた切り口で、故障率や設備コストの分析ができるかもしれない。このように全体を切り分けるタイプのMECEは、モレルことが少なく、分割できればダブルことも起きにくくなる。

 

《尺度によるMECEの切り口》

 尺度による切り口では、「直線状に並んでいるものを任意の点で区切る」ことで、MECE実現することができる。この尺度の切り口は、先ほどの「分割という切り口の直線バージョンと考えると、イメージしやすいかもしれない。主に数字を使って尺度を表しているものに使いやすい方法である。例えば、「年数」「金額」「距離」「回数」「パーセンテージ」などで、MECEがよく使われる。この尺度の切り口は、「区切るものすべて挙げればモレがない」「基準による点の前後で要素が分かれるためダブらない」ことになる。

 コンビニを例として「最寄り駅からの距離」を距離を尺度の切り口でMECEすると、「駅改札内、駅構内、500m未満、500m以上1㎞未満、1㎞以上3㎞未満、3㎞未満、3㎞以上」のような分け方が考えられる。また「来店客の年齢層」でMECEすれば、「10代、20代、30代、40代、50代、60代、70代以上」のようになるかもしれない。ここで少し気になるのが、「区切りは等間隔である必要があるのか?」「必ずすべてを含めなければならないのか?」という点である。

まず、「区切りは等間隔である必要があるのか?」という疑問についてであるが、必ずしも等間隔である必要がない」ということである。これは等間隔で区切ることに意味がある場合と、意味がない場合が存在するためである。等間隔で区切ることに意味があるのは、「区切りごとに中身を集計して比較する」ことが必要な場合だ。先ほどの例の「来店客の年齢層」であれば、等間隔で区切ることで、それぞれの年齢層の来店客を数値で比較することができる。

一方、等間隔で区切ることに意味がないのは、「ビジネス上で意味のある区切りが存在している」場合などだ。例えば、先ほどの例の「最寄り駅からの距離」については、仮に「500m以上1㎞未満」の店舗を同じグループとして扱う方が、ビジネス上の意思決定がしやすいと判断すれば、等間隔で区切る必要はない。いずれにせよMECEを行う目的は、あくまで情報を整理して伝えやすくするためである。等間隔で区切ることで逆に伝わりにくくなるのであれば、それは避けなければならない。

次に、「必ずすべてを含めなければならないのか?」という疑問についてであるが、こちらも「必ずしも含める必要はない」というのが答えである。先ほどの「来店客の年齢層」では「10歳未満」の客層は存在しない。これは一見「モレ」が生じているように見えるが、本当に「モレ」なのかどうかは、ビジネス上の意味で考えてみることだ。もし仮にそのコンビニが、ファミリー層を攻略するために「10歳未満」の顧客の行動も重視する必要があれば、「モレ」になる。

逆に、そのコンビニの主要顧客の年齢が高めで、「10歳未満」の顧客が滅多に来店しないのであれば、わざわざ区分として分類する必要がないかもしれない。このように「何のためにMECEをしようとしているのか」を考えることで、「モレ」に対する考え方も変わってくるわけである。