MECEの7つの切り口:プロセス・因数分解によるMECEの切り口

《プロセスによるMECEの切り口》

 プロセスによるMECEの切り口は、「物事が起きる一連の流れを見つける」ことでMECEを実現することができる。このプロセスによるMECEの切り口は、先ほどの尺度のように直線的に並んでいるものを区切っているが、その「区切り」が最初から存在している場合である。また直線だけでなく、循環して戻ってくるような流れも含んでいる。例えば、「直線的プロセス(開始:A→B→C→D:完了)、「循環プロセス(A→B→C→D→Aに戻る)」というような一連の流れである。

 このプロセスの切り口は、「工程全て挙げることができればモレがない」「同時に2つの工程を通ることがなければダブらない」ことになる。コンビニであれば、様々な作業手順がプロセスとして存在している。作業プロセスごとにMECEで分ければ、手順ごとに作業ミスが起こった場合の対処法をまとめることもできるし、過去のトラブルなどをわかりやすくまとめることができるかもしれない。また、1つの作業を考えても細かい手順として分解すれば、それが「小さなプロセス」として認識できるようになる。そうすれば新しいスタッフを教育する場合に役立つかもしれない。

《因数分解によるMECEの切り口》

 因数分解によるMECEは、「出来事を掛け算の数式に変換する」ことで、MECEを実現することができる。因数分解の切り口は、「すべてを掛けたものが全体になるためモレがない」「同じものを2つ掛けない限りダブらない」ことになる。コンビニの例として「売上」を因数分解の切り口でMECEすると、「売上=客数×客単価×来店頻度」というように表現できる。「もっと売上げをあげたい」という時に、単純に「売上」をそのままの状態で考えるのではなく。

「客数」「客単価」「来店頻度」の3つに分解して考えることで、対策をより具体的に考えることができる。さらに「客数」を掘り下げる場合には、「客数=立地×天候×曜日」などとも表現できるかもしれない。もちろんこのような式は、すべてを数値で表せないので、厳密には正しい式ではないが、ビジネスで起こる出来事を、納得できる形で説明できていれば情報は伝わる。因数分解については、クリティカルシンキングで記述した「因数分解(再掲)」を参照されたい。

《売上高の因数分解の例》                                                        

  売上高=数量×客単価

  売上高=顧客数×客単価×営業日数×店舗数

  売上高 = 販売数量 × 販売単価

  売上高 = 顧客数 × 客単価 × 営業日数 × 店舗数

  売上高 = 販売数量 × 販売単価×1回当りの購買個数 × 購買頻度

販売数量に着目

  売上高 = ( 顧客数 × 購買頻度 ) × 購買単価

  売上高 = 顧客数 × 購買単価 × 1回当りの購買個数 × 購買頻度

  売上高 = 総訪問件数 × 受注率 × 受注単価

営業に着目

  売上高 = ( 顧客数 = 席数 × 満席率 × 回転率 ) × 客単価 × 営業日数 × 店舗数

  売上高 = 来店客数 × 客単価

来店客数に着目

  売上高 = 来店客数 × ( 購入率 × 購入点数 × 商品単価 )

購入率に着目

  売上高 = 販売数量 × 1品当り単価 

販売数量に着目

  売上高 = 売場面積 × 坪効率

売場面積に着目

  売上高 = ( 既存顧客数 + 新規顧客数 ) × ( 1品単価 × 買上点数 )

  売上高 = 商圏内需要額 × 地域シェア

商圏・シェアに着目

MECEの切り口のまとめ》

 これまで述べたMECEの代表的なパターンは以下の7つである。

1.因果関係:同じ結果をもたらす複数の原因を探す

2.類似性:共通の特徴を見つけてグループ化する

3.二律対立:互いに反する概念で2つに分ける

4.分割:全体を境界線で3つ以上に分割する

5.尺度:直線状に並んでいるものを任意の点で区切る

6.プロセス:物事が起きる一連の流れを見つける

7.因数分解:出来事を掛け算の数式に変換する

 シンプルな事柄であれば、上記の7つのパターンのどれかにピタリはまるものが見つかるかもしれない。しかし、物事が複雑になってくると、1つのパターンに綺麗にはまるというのも少なくなるだろう。そんな時には、より小さな出来事に分解して、それぞれに対してMECEの切り口を考えて見ることが大切である。MECEの切り口で一番重要なことは、「情報を整理して相手に伝わり易くする」ことであるから、もし、「モレ」や「ダブリ」を無くすために、情報がきちんと伝わらなくなってしまっては意味がない。