思考力の使い方(思考法の活用の仕方と留意点)

ロジカルシンキングはフレームワーク(枠組み)という点では限界がある。

(1)ロジカルシンキングのフレームワークの限界

①前提次第で結論が変わる

ロジカルシンキングでいうロジカル(論理的)というのは、前提に基づき推論し結論を導くことを論証ともいう。前提を間違えれば結論は異なる。

②根拠次第で主張が異なる

ロジカルシンキングの「だから?(So What?)と「どうして?(Why So?)」も、「根拠」の選択次第で「主張」が異なる。無数にある根拠の中からの選択は、ある面において、人それぞれの恣意的なものである。したがって、根拠の選択が違えば主張も異なる。

③要素の分解(因数分解)のしかたにより対策が異なる

MECEの要素も、ビジネス上、一義的に決まることは少ない。例えば、「売上を増やすにはどうしたらよいか」という点で、要素分解する場合、業種などにも左右され、年代別あるいは地域別、さらに商品別など、いろいろ分解できる。年代別売上合計=地域別合計=商品別合計となるはずだが、どの要素を選択するかによってビジネス上の対策が違ってくる。このように、ロジカルシンキングに限らず、フレームワークには限界がある。あくまでも、思考経済上の効率化のために意味があり、万能ではない点には注意を要する。

(2)ロジカルシンキングを補完するクリティカルシンキング

それは本当か、他にないかを疑う。ロジカルシンキングには限界があり、それを補うのがクリティカルシンキングである。前述のように「①前提次第で結論が異なる」ということであれば、「前提」を批判的に検証して、前提の内容を入れ替えるのがクリティカルシンキングの役割である。あるいは、前述の「②根拠の選択」や「③要素の分解(因数分解)」も、クリティカルシンキングの活用により精度が高まるかもしれない。

「売上を増やすにはどうしたらよいか」という点でいえば、もしかしたら、既存顧客と新規顧客に要素分解するのが妥当かもしれない。ちなみに、売上高の因数分解の仕方も次のとおり数多くある。このうち、自社においてはどれが妥当か考えてみよう。

《売上高の因数分解の例》                                                        

・  売上高=数量×客単価

・  売上高=顧客数×客単価×営業日数×店舗数

・  売上高 = 販売数量 × 販売単価

・  売上高 = 顧客数 × 客単価 × 営業日数 × 店舗数

・  売上高 = 販売数量 × 販売単価×1回当りの購買個数 × 購買頻度

←販売数量に着目

・  売上高 = ( 顧客数 × 購買頻度 ) × 購買単価

・  売上高 = 顧客数 × 購買単価 × 1回当りの購買個数 × 購買頻度

・  売上高 = 総訪問件数 × 受注率 × 受注単価

←営業に着目

・  売上高 = ( 顧客数 = 席数 × 満席率 × 回転率 ) × 客単価 × 営業日数 × 店舗数

・  売上高 = 来店客数 × 客単価

←来店客数に着目

・  売上高 = 来店客数 × ( 購入率 × 購入点数 × 商品単価 )

←購入率に着目

・  売上高 = 販売数量 × 1品当り単価 

←販売数量に着目

・  売上高 = 売場面積 × 坪効率

←売場面積に着目

・  売上高 = ( 既存顧客数 + 新規顧客数 ) × ( 1品単価 × 買上点数 )

・  売上高 = 商圏内需要額 × 地域シェア

←商圏・シェアに着目

 結局、ロジカルシンキングにおいては、「それは、本当か(妥当か)?」「他にないか?」など疑う視点をもつことと、思考のバイアスから極力自由になるよう意識的に働きかけることが必要である。

(3)ロジカルシンキングを補完するラテラルシンキング ~イノベーションを呼ぶ

同様に、ラテラルシンキングも、ロジカルシンキングを補完する機能があります。前述のロジカルシンキングの「①前提次第」であるが、前提の選択肢を広げるのがラテラルシンキングである。既成概念や常識にとらわれず、新たな前提を選択することになる。これが、新たな商品やサービスを生みやすいことは想像できる。

 例えば、「丼も箸もない米国で即席ラーメンを食べるとしたら」という前提を置いてラテラルシンキングで考えたのが、紙コップに麺を割って入れ、お湯を注いでフォークで食べるようにしたカップ麺である。あるいは、「食べた後のカップというゴミの収集をなくすとしたら」という前提を置いてラテラルシンキングで発明されたのがカップ(コーン:前日の例題)自体も食べられるソフトクリームである。