その他の思考法(仮説思考、アナロジー思考、デザイン思考)

 ビジネス上、トリプルシンキング以外で、意識して身につけておいたほうがよい思考法は「仮説思考」と「アナロジー思考」「デザイン思考」である。

(1)仮説思考

 仮説思考は、今ある限られた情報だけで、現時点で最も妥当と思われる結論を導き出す思考のことである。最近、ビジネスでは特にスピードが重要視されており、「100点満点でなくてもよいから、70点を目指す」というスタイルが一般的になってきたこともあり、試行錯誤において役立つ思考法の代表例である。仮説を迅速に立てて素早く検証し、フィードバックして新商品・新サービスを完成させるという点では、後述のデザイン思考ともよく似ている。

 なお、仮説を迅速に立てる(仮説推論)とは、どのようなことかというと、次の例で比較すると分かりやすいと思う。ちなみに、この3つが伝統的な論理学における思考法である。

・演繹法:「雨が降ると、土が湿る。雨が降っている。その土は湿っている」

・帰納法:「これまで、雨が降ると、土が湿ってきた。雨が降ると土は湿る」

・仮説推論:「土が湿っている。雨が降ると、土が湿る。つまり雨が降ったに違いない」

(2)アナロジー思考

 自分が知っている情報や経験を「未経験の分野」に当てはめるという思考法を、アナロジー思考(類推)という。ビジネスにおいては、非常に簡単で効果がある。他の国、同業他社、他業界にあるものを自分の業界に当てはめるということであるから、ラテラルシンキングの発想法の一つ「翻訳法」もアナロジー思考の一種ともいえる。また、プレゼンテーションなどで使う「比喩(たとえ話)」も近いものだが、似て非なるものである。

(3)デザイン思考

 最近で有名なものは、思考(Design Thinking)である。問題発見や解決のために、デザイナーが実践してきた手法を体系化したもので、スタンフォード大学のハッソ・ブラトナー・デザイン研究所(通称dschool)が提唱する、『デザイン思考の5段階』という思考モデルがある。その5段階とは、「共感:Empathize」→「定義:Define」→「発想:Ideate」→「試作:Prototype」→「試行:Test」となっている。

デザイン思考の5段階

共感:Empathize(現場でじっくりとユーザーを観察)

              ↓

定義:Define(集めた情報を基にイノベーションを起こせるテーマを定義)

               ↓

発想:Ideate(設定したテーマを具体化するアイデアを検討)

                          ↓

試作:Prototype(アイデアを端的に伝えるプロトタイプを作成)

                          

試行:Test(レビューやユーザーからのフィードバックを受ける)