ラテラルシンキングを鍛えるには

 ラテラルシンキングは、何もしなければ身につけることは難しい。しかし、意識して鍛えることで、しっかり活用できるようになる。アイデア発想法などのワークショップでも、最初に何もヒントを与えないでアイデアを出すよう求めると、しばらく沈黙が続くが、上記のような発想法を提示すると、堰を切ったようにアイデアが溢れ出る。ラテラルシンキングを鍛えるには、まず、大前提として複数の視点を持つことが大事だ。多くの人は、既成概念や固定概念、そして常識にとらわれている。

ラテラルシンキングを身につけるには、始めにこれらを取り払うことが必要である。思考する際には、自分の視点だけではなく、相手の視点、まったく別の第三者の視点を活用していくことである。また、思考パターンを変えてみることも重要である。普段論理的に考えやすい場合は、「直感的に考えてみる」「統計的に見てみる」など、意識的に思考方法を変えることが有効である。

そして一番重要なことは、ラテラルシンキングを数多く実践するということだ。実際にラテラルシンキングは取り組んでいかないと身につけることはできない。仕事中もちろん、日常生活においても意識的にラテラルシンキングを取り入れるようにしてみることが必要である。さらに、ラテラルシンキングを身につけることにより、今までの既成概念では生み出すことができなかったアイデアや発想ができるようになる。この能力はビジネスシーンにおいて大きな力になってくれるだろう。意識的にラテラルシンキングのトレーニングを行い、発想力を身につけるよう薦める。

このラテラルシンキングの解説となると「クイズ問題」や「シチュエーションパズル」を多用して「ラテラルシンキングの発想例」として解説されることが多い。これらは「頭の体操」としては有益かもしれないが、それらに内在する本質的な「着眼点」や「思考法」を理解しない限り、問題解決に応用することはできない。ビジネスにおけるラテラルシンキングは「前提を疑う」ことからスタートする。そして、ビジネスの世界でよく置かれる「前提」は、大きく5つある。①問題設定、②目的設定、③枠組み設定、④先入観、⑤視点がそれで、これらは5つの項目ごとに「ラテラルシンキングの成功例」のうち、「問題設定を疑う」を紐解きながら、ラテラルシンキングの鍛え方を見てみよう。

《問題設定を疑う例題》

・あるテーマパークで、アイスクリームを販売している出展者があった。

・アイスクリームは売れているが、食べた後のカップやスプーンが付近の芝生に捨てられルことが多く、テーマパークから苦情が入っている。

・この状況であなたはどうするか?

 

 あなたはこの問題を読んで「ゴミ箱を設置する」などの解決策を考えたかもしれない。しかし、この例題で用意されている解答は、以下のようなものだ。【回答例では、カップ自体も食べられるようにする(つまりソフトクリームにする)】であった。これはソフトクリームの誕生秘話として語られるエピソードだが、ラテラルシンキングの文脈でいえば、その本質は「問題設定を疑う」にある。もしあなたが問題設定を「出てしまうゴミを投げ捨てさせずに回収するには?」と置けば「ゴミ箱を設置する」という解決策は容易に浮かべることができるはずだ。

 しかし、ゴミ箱を設置したところで100%ゴミが出ない売り方をすることは不可能であり、アイスクリームの売上が上がればゴミ箱はすぐにいっぱいになるため、やはり投げ捨ては起きるだろう。一方で、問題設定そのものを疑い「そもそもゴミが出ない売り方をするには?」という「問題設定の転換」ができれば「ソフトクリームを売る」という発想が出てきやすくなる。もしソフトクリームを売ることができれば、そもそもゴミが出ないのだからゴミを回収する必要がなくなる。

さらに、ソフトクリームの売り上げがどれだけ上がっても、そもそもゴミが出ない以上、ゴミ箱がいっぱいになることもない。つまり、「ソフトクリームを売る」という発想は「ゴミ問題」の根本解決になっていないことがわかるだろう。適切な問題解決の前提は、解くべき問題の設定(=イシュー)を間違えないことだ。このような問題設定を疑う」ことをトレーニングすれば、これまで思いつかなかった「問題解決策」を見出すことが可能になる。