パラダイムシフトで戦略が根本から変わる

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

《「資本主義」は終わろうとしているのだろうか?》

 200300年に一度起きるか起きないかというパラダイムシフト(大きな価値観の転換)がおこりつつあるという見方もあるが、現時点では定かではない。これは教科書的な答えのないテーマである。まさに我々一人ひとりが考えるべきことである。資本主義自体に大きな見直しがなされるなどあり得ないと思う人もいるかもしれないが、実は資本主義自体もたかだか200300年前に新しいパラダイムで、それ以前はほぼ正反対のパラダイム(封建主義経済)のもとで社会・経済が機能していたのだ。

資本主義は、小規模分散の小さな村単位での自給自足型経済、すなわち自分で生産して自分で消費する形がむしろ普通だった。また、財産の多くは共有財産で、私有財産という概念は希薄だった。村の都合を無視して自己利益を追求するのは悪であり、村八分という制裁を受けた。資源を大切に使い、浪費(大量消費)は悪だった。ここでもう一度パラダイムシフトが起きてもおかしくはない。そうなれば、企業戦略の根本原則が変わるだろう。

どのような方向で変わっていくのかは分からないが、可能性としての方向性は、①小規模・分散型、②オープン・コラボレーション、③Prosumer(生産者=消費者)、④シェアリング・エコノミー、⑤自己実現、コミュニティへの市民としての貢献、⑥地球に優しい(環境)、などがその例である。これらにうまく対応すれば大きなチャンスになる可能性がある。逆に、過去の成功にしがみつく企業にとっては脅威になる。このようなパラダイムシフトが起きれば、これまでの原則・前提が180度変わるわけであるから、企業人ばかりではなく、我々一人ひとりの問題として考えなければならない。

《新型コロナウイルス禍の企業戦略》

 最後に新型コロナウイルスの影響を経営戦略の観点から考えてみよう。まずは効率性と安全性のトレードオフの再考である。企業の効率性と安全性のトレードオフの間で自社の立ち位置を決めていく。今回のような想定外の不確実性を受けて、立ち位置をやや安全性にシフトする企業も増えていると思われる。しかし、それ以上に重要なのは新型コロナウイルスを受け、自社の事業の本質は何かを真剣に見極める必要が出てきた。

例えば、外食産業では売上が減少した。外食産業は「なぜ顧客は食べに来てくれないのだろう? 我々の提供価値は何だったのだろうか?」と事業の本質を考えざるを得ない状況に追い込まれてしまった。例えば「自炊を超える美味しい食事」が価値だったのかもしれない。そうだとすれば、その価値をデリバリーで顧客の自宅に届けて提供してもよいはずだ。

多くの外食産業は止むにやまれずデリバリーを始めたかもしれないが、実はこれは自社の提供価値を再考した「新事業」であり、今までの中食・内食に奪われてきた顧客を逆に奪っているとポジティブに考えることもできる。本来の事業が浮き彫りになった結果として起業が戦略を変えるのであれば、新型コロナウイルスが治まっても企業戦略は元通りの「ノーマル」には戻られない。いわゆる「ニュー・ノーマル」への移行である。