補足-(1) 経営計画と経営戦略の関係

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 経営管理を経営計画と経営統制に大別するとき、経営計画は企業の将来を予想し、将来の一定の企業の姿を形成するためのあらゆる意思決定を含んでいる。それは経営目標、経営方針、経営戦略、長期経営計画、個別計画、予算、業務手続などから成っている。このなかで、まず、(1)恒常的計画と、(2)可変的計画の区別がある。前者は、恒常的に起こる同じ問題に対する計画であり、一旦決定すれば、企業の環境変化にかかわらずある程度恒常的な性格をもつもので、経営方針や標準的業務手続がそれに属している。

 後者は、企業の環境変化によって起こってくる新しい問題に対応するための計画であり、経営戦略や個別計画がそれに属している。経営計画は、さらに(1)個別計画と、(2)期間計画に分けられる。前者は、新製品開発、工場建設、合併計画などのように、個々のプロジェクトごとに計画を立てるものであり、各計画によって計画期間はバラバラであり、短期のものは数ヵ月から長期のものは3年から5年に及ぶものをいう。後者は、一定の計画期間を基礎にして、各個別計画や各部門計画を総合する総合計画をさしており、個々の計画を総合する総合計画をさしておの、個々の計画を総合するために共通に適用できる財務数値を用いた計画であることを特徴としている。

 期間計画は、計画期間の長短によって、(1)短期経営計画と、(2)長期経営計画に分けられる。前者は、経営期間が1年以内のものであり、毎期予算、短期の生産計画、販売計画などがこれに属している。後者は、計画期間が1年以上にわたる期間計画であり、長期にわたる経営計画を指している。広義の長期経営計画は、3年を計画期間とする中期経営計画と、5年以上を計画期間とする長期経営計画に分けられる。

 最後に重要な区別は、計画策定の実体の相違によって、(1)形式的計画と、(2)創造的計画の区別である。前者は、毎期予算や短期の生産、販売計画のように定期的に作成されるために、いつしか計画作成が惰性化し、各部門活動の調整には役立つが、新しい問題や機会の発見もなく、新しい代替案の探求も行わない計画を指している。後者は、企業内外の環境変化の中に新しい問題や機会を発見し、問題を解決するための新しい代替案が行われ、創造と革新に導く計画とさしている。

本来の計画は、創造と革新を合理的に最小のリスクをもって行うとともに、そのために各部門の活動を集結するところに、その存在価値があるのであるから、形式的計画は無意味であるといわなくてはならない。このような創造的計画の推進のためには、経営計画を次の三つに分類することが有用である。(1)戦略的計画、(2)管理的計画、(3)業務的計画である。まず、戦略的計画は、企業の外部環境の変化に対して、企業または主要部門の全体を適応させるために、経営目標とそれを達成させるための経営戦略を決定する計画である。企業の環境変化のなかに、戦略的問題や戦略的機会を発見し、それを解決したり、利用するための経営戦略を決定するのが、戦略的計画である。

それは、トップ・マネジメントないしゼネラル・スタッフの任務であり、多角化、製品開発、市場開拓、市場浸透などの経営戦略が決定される。管理的計画は、目標と経営戦略を実行するために必要な諸資源、例えば、人員、設備、技術、資金などを調達し、運用し、開発するための計画を指している。したがって、人員計画、組織計画、設備計画、予算ないし利益計画などは、この管理的計画に属している。次に、業務的計画、日常の販売、生産や在庫活動の最大の能率を上げるための計画である。短期の販売計画、生産計画や在庫計画は、この業務計画に属している。

また、経営計画は、(1)戦略的計画と(2)戦術的計画に分類することもできる。この2つの分類の場合、管理的計画は、戦略計画に付随して作成されるものとみなされる。戦略的計画は、向こう3年ないし5年にわたる長期計画である場合が多いのに対して、戦術的計画は、企業または事業部のトップ・レベルで決定されるものであり、戦術的計画は一つの特定の部門計画である場合が多い。また、戦略的計画に必要な情報は、主として企業の外部環境の情報である外部情報であるのに対して、戦術的計画のデータは、企業の内部で再生された内部情報である場合が多い。かくて、戦略的計画は、情報の不確実性が高く、問題が複雑であるために、情報の不確実性にいかに対応するか、計画作成の重要な課題をなしている。(経営学辞典より)