補足-(2)戦略策定の目的を明確にする(市場規模→シェア)

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 前項の記述から明らかなように、経営戦略は経営計画の構成要素の一つであるから、経営の目的が明らかにすることが第一歩である。つまり、企業経営にとってどんなに経営戦略が重要であっても、何を目的とするかが曖昧であっては何も始まらない。そんなことは先刻承知であるといわれるかもしれないが、目的が不明確なケースも多々あるし、目的があっても、「やりたいこと」がまずあり、それが「誰を対象にしているか」が抜け落ちているか、あるいは対象とする市場の大きさ(売上実現の可能性についての配慮がない。

 企業経営で最も大事なことは、「誰のどんなニーズに対してどんな製品・サービスを提供するのか」が中核据えられていなければならないのだが、自分が「やりたいこと」が先で、そのあてに「それを求めている人は誰でどれくらいいるのか」を認識するというパターンが多い。最も「やりたいこと」が明確になっているということは、ある程度のニーズ(市場規模)があるということもある程度は認識しているということになるのだが、経営を成り立たせるためにどれくらいの売上を見込めるかを調べなければ意味がない。

 すなわち、企業の生命線ともいうべき売上高は、市場規模・全体・エリア、顧客数、一人当たりの購買数(消費量)、購買額、参入企業数、参入企業ごとのシェア、それに市場の成熟度、技術革新の影響、新規参入者の動向等々にも目配りしなければならないことになるはずだ。ここではまず、市場規模について考えてみよう。一口に市場規模と言っても、単に市場の大きさ(全体的な大きさ)のみを把握しただけでは、ほとんど経営の意思決定(ターゲットとして選定する市場の特定)には役立たない。

 したがって、ここでいう市場規模とは、自社が進出しようとする市場の規模を多方面から検討し、他社との競争力を測定する必要がある。例えば、通常シェアといえば、全体市場に占める当社の売上高の割合を指すが、全体市場規模をどの範囲で捉えるか、またはどの商品カテゴリーで捉えるかによって異なる。そこで、シェアを捉える前に売上高を多様な切り口から分解し、問題個所をあらかじめチェックしておくことで、シェアの拡大に寄与するという方向も考えるべきである。

 売上高の分解は、「売上高=売上総利益+売上原価=営業利益+販売管理費+売上原価=経常利益+営業外収益+販売管理費+売上原価」という売上高の利益構造で分解するのが一般的である。また、成長率を見るためには、「売上高=前年度売上高+売上高増減=前年度売上高×売上高成長率」というように分解する。

 顧客層別の強みを見るためには、「売上高=10代層の売上高+20代の売上高+...=国内売上高+国外売上高=東日本売上高+西日本売上高」という分解になるし、資本の効率性や従業員の生産性を見るためには、「売上高=店舗数×店舗当たり売上高=従業員×従業員1人当たり売上高=売上債権×売上債権回転率=総資産×総資産回転率」に分解する。

 さらに、各事業や商品の強みを見るのであれば、「売上高=A商品売上高+B商品売上高...=A事業部売上高+B事業部売上高...」に分解してみることになるが、顧客の行動で分解すれば、「売上高=(ターゲット人口×認知率×来店率×購入率)×(年間購入数×1回当たり購入点数×1点当たり商品単価)」になる。

 ここで取り上げているシェア分析の場合は、「売上高=業界売上高×自社シェア=業界売上高×商談カバー率×勝率=業界売上高×特約店カバー率×ISS(インストアシェア)=業界売上高×カバー率×認知率×トライアル率×リピート率」に分解してみる。このほかにも、付加価値で分解することや細分化した費用で分解する場合がある。

 いずれの場合も、単独で行われるのではなく、複数の分解方法を駆使することにより、自社の強み・弱みを発見し、シェアアップに繋げるために行われるものであるが、定性的な要因を見つけ出せるとは限らない。したがって、売上の分解やシェア分析は、顧客の深層心理に迫るための分析手法に過ぎないのである。しかし、こうした分析を積み重ねることによって、顧客のインサイトに迫ることができれば、独自の強みをどの市場に投入するのがベストなのかが浮かび上がってくるので、そこが自社にとってのブルーオーシャンになることもあるかもしれない。