後発小規模企業の先発大企業に対する強み

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《技術進化により低コスト・高効率が実現》

 産業革命は大型設備をつくり集中生産して、コスト低下と効率向上を実現するという「大企業モデル」を生み出した。しかし、その後の技術進化により小規模でも低コスト・高効率を実現できるようになり、分散して手元にある小規模設備の利用がふえ、さらにデジタル化により分散している資源を安価につなぐことが可能になった。その結果、以前は不可能だった「小規模分散資源の組織化」が可能になった。

古くはウィキペディア、最近ではUberAirbnbがその例である。重要な示唆は「大企業による大規模先行投資」という勝ちパターンが崩れたことだ。UberAirbnbは世界最大のタクシー会社・ホテル会社であるが、自社でタクシー・部屋を所有していない。資源を持たない後発の小規模企業が分散省資源を組織化して先発大企業を倒すことが可能になり、ビジネスの可能性が広がってきた。

ちなみに、2000年初頭にウィキペディアが既存の百科事典を凌駕したときに「同じことが我が業界でもおきるかもしれない」と気がついたタクシー会社、ホテル会社があったであろうか? 人間の想像力がいかに貧困かという事例である。「他業界だから関係ない」では済まされない。むしろ異業種で起こっていることにイノベーションの示唆があるはずだ。いまや一網打尽型の戦略ではコストパフォーマンスが低すぎる。

《「すり合わせ型」と「組み合わせ型」》

 ビジネス構造(アーキテクチャー)は、大きく次のように2つに分かれる。

・すり合わせ型(インテグラル):自動車のように、各要素を調整しないと全体として機能しないタイプ

・組み合わせ型(モジュラー):パソコンのシステムのように、各要素間の調整がなくても全体として機能するタイプ

 これは藤本隆宏氏によって提唱され、もともとは製品と部品の関係から生まれた概念だが、エコシステムのように複数のプレーヤーが協調する場合にも応用できる。

 すり合わせ型ビジネスは、プレーヤーが密に相談して全体を作るため、協調性が重要である。自動車は協調性が重要なすり合わせ型製品なので、日本企業が強いと言われてきた。また、対面のコミュニケーションで暗黙知を共有することが重要なので、同じ場所に集まる。自動車メーカーと自動詞部品のサプライヤーは多くの場合、同じ地域に立地する。

《デジタル化で変わりつつある「すり合わせ型」》

 デジタル化によって、すり合わせ型ビジネスに大きな変化が起きている。1つは、すり合わせ型ビジネスの組み合わせ型化である。自動車も電気自動車になることで組み合わせ型に移行しつつある。もう1つは、同じ場所にいないと機能しにくいと思われていたすり合わせ型ビジネスが、デジタル化によりグローバルに遠隔地同士でも可能になったことである。このインパクトは従来のサプライチェーンのあり方にも強い影響を与えると考えるべきであろう。