世界を変える「サイバー・フィジカル・システム」(2)

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 《最適解を見つけ出す人工知能》                          
 現実世界のデータは、インターネットを介してクラウドに送られる。インターネットにつながるデバイスの数が劇的に拡大し、Webサービスが充実し続ける中、そのデータ量は、急速な勢いで増え続けている。このようなデータを「ビッグデータ」呼んでいる。現実世界のビッグデータは、集めるだけでは何の価値も生み出せない。解析して価値ある情報を見つけださなければ、生かされることはない。しかし、そのデータ量は膨大で、内容や形式は多種多様である。単純な統計解析だけでは、価値ある情報は引き出せない。この課題を解決する手段として、「人口知能(AI)」に注目が集まっている。                

 例えば、日本語の文書や音声でのやり取りなら、言葉の意味や文脈を理解しなければならない。また、写真や動画であれば、そこにどのような情報が映っているか、だれが映っているかを解釈できなければ役に立たない。さらには、誰と誰がどの程度親しいのか、商品やサービスについてどのような話題が交わされたのかといった意味を読み取り、何らかの対処が必要かどうかといった解釈や判断を行わなくてはならない。このようなことにAIが役立つ。

 AIは、コンピューターの性能向上や「人間の脳の仕組みを参考にした」技術である「深層学習(Deep Leaning)」が開発されたおかげで、その実用性が急速に高まっている。囲碁や将棋の世界でトッププロを打ち負かしたのも、そんな深層学習の成果の一つであり、特定の知的作業では人間の能力を超えるまでになっている。そんな技術を使えば、このようなことができるようになる。                 

・曖昧な音声での問いかけや命令を理解して、情報提供や様々なサービスを提供し、難しい機械の操作を代わってくれる。                                                                              

・人間が指示を与えたり操作したりしなくても、自分が学習し、判断・行動できるようになり、人間にしかできないことを代わりにやってくれる。

・膨大なデータから見つけ出した規則性や関係性から、未来に何が起こるかを高い精度で予見てくれる。

サイバー・フィジカルシステム

 アナログ世界をデジタルデータで捉え、現実世界とITが一体となって社会を動かす仕組みを「サイバー・フィジカルシステム(CPSCyber-Physical System)」と呼んでいる。これを「(広義の)IOT」と捉える考え方もある。インターネットにつながるモノの数は増加し、ソーシャルメディアやWebサービスの利用が増えればデータはさらに増え、きめ細かになってゆき、より精度の高い現実世界のデジタルツインがサイバー世界に築かれていく。そのデータをAIで解析し、さらに正確な予測や計画、アドバイスができるようになる。

 その情報を利用して現実世界が動けば、その変化は再びデータとしてとらえられサイバー世界に送られる。いま、そんな仕組みが、私たちの社会や生活の基盤になろうとしているCPSは「現実世界とサイバー世界がリアルタイムで改善活動を行ってくれる仕組み」と捉えることもできる。これにより、経済やビジネスは効率よく機能し、コスト低下、時間短縮、個別最適といった恩恵を私たちに与えてくれるさらに、エネルギーや地球資源などの消費に無駄が無くなり、サスティナブル(持続可能)な社会の実現にも貢献してくれるものである。