世界を変える「サイバー・フィジカル・システム」(1)

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 現実社会とサイバー世界は、どのようになるのだろうか。

私たちの住む「現実社会(Physical World)」は、さまざまなモノと多くのヒトで満ち溢れている。それらが、お互いに関係を持ち、影響を及ぼし合いながら社会や経済を動かしている。そんな現実世界はアナログで連続的で、途切れることのない時間と物質によって満たされている。地理的距離はモノやヒトを隔てる絶対的な壁であり、時間は不可逆的で巻き戻すことはできない。

そんなアナログな現実世界を、モノに組み込まれたセンサーによってデータとして捉えようという仕組みがIOT(モノのインターネット/internet of Things)である。IOTにより、「現実世界のデジタルコピーが作られてゆくと解釈することもできる。そんな時々刻々の状態を写し撮ったデジタルコピーが、インターネットの向こうにあるクラウドコンピューティングの世界、すなわち「サイバー世界(Cyber World)」に送られ、積み上げられてゆく。

 このデジタルコピーは、「現実世界と瓜2つのデジタルな双子の兄弟」という意味で「デジタルツイン(Digital Twin)」とよばれている。そんなデジタルツインはサーバー世界のデータから、地理的距離を一瞬にして行き来でき、時間を自由に遡ることができる。それにより、これらのことが実現できる。

・これまでには考えられなかった新しいヒトやモノ、あるいはプロセスの組み合わせを生み出す。

・過去のデジタルツインに埋め込まれている事実から、ものごとの因果関係や原因を見つけだす。

・いまどうなっているかをリアルタイムに教えてくれる。

・データに刻み込まれた規則性を見つけ出し、そこから未来を予見できる。具体的には、スマートフォンには、位置情報を取得するGSPや身体の動作を取得するセンサーが組み込まれている。私たちが、それを持ち歩き使用することで、日常生活や活動がデータ化される。ウエアブルデバイスは身体に密着し、脈拍や発汗、体温などの身体状態がデータ化される。

 自動車には、既に100ほどのセンサーが組み込まれている。住宅や家電製品、空調設備や照明器具などの「モノ」にもセンサーが組み込まれ、さまざまな出来事がデータ化されようとしている。それがインターネットにつながり、取得したデータを送り出す仕組みが作られつつある。

 「ソーシャルメディア」もまた、デジタルツインを築く役割を担っている。例えば、私たちはスマートフォンやタブレットを使い、FacebookLINEなどで、写真や動画、自分の居場所 の情報を、デジタルデータにしてネットに送り出している。また流行や話題、製品やサービスの評判について、地域や時間を超えてさまざまな人たちと意見を交換している。また、「友達になる」や「フォローする」ことでヒトとヒトのつながりについて情報を生み出し、インターネットに送り出している。

他にも、オンラインでの買い物やさまざまなWebサービスを利用することで、私たちの行う行動や世の中の出来事もデータ化される。モノとコト、すなわち「ものごと」にかかわる膨大なデータが、インターネットに送り出される。

インターネットにつながっているモノは、2009年に25億個だったものが2020年には300億個~500億個へと急増するとされている。ソーシャルメディアもWebサービスもユーザーを増やしている。それらを通じて現実世界の「ものごと」が、きめ細かく、そしてリアルタイムでデータ化される仕組みが、築かれつつある。