補足-(3)戦略策定-ビジネスモデル開発

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 戦略策定に着手する前に明確にしておかなければならないこととして3番目に上げたいのは、「どんな方法で」である。ここでは敢えて「ビジネスモデル開発」というタイトルにしたのは、どんな独自な方法で提供するかということ自体が、ビジネスモデルになり得ることが多くなってきているからである。本来、ビジネスモデルというものは、「誰に、何を、どんな独自の方法で提供するのか」という3つが明確に示されたいわゆる戦略ドメインが定義されたものをいうわけだが、AIの進歩により、「売り方」に特化したビジネスモデルが次々に開発されているからである。

 こうした事業は、流通チャネルやサブライチェンの開発にとどまらず、これまで必要性はあったものの、物流上非効率であったりしたため、埋もれていたニーズを掘り起こし、採算ベースに乗るシステムに衣替えするというモデルである。つまり、これまでの業界常識を覆すビジネスモデルが続々登場している。ということは同じ商品を扱っていても、同じ戦略グループには属さないビジネスモデルを開発できる余地が広がっているということになるわけである。

ちなみに、これまでの事業ドメインは、「誰に対して、どんな商品を、どんな独自の方法で」というのが、バランスよく、あたかも正三角形であることが定番であるかのような印象であったが、今後は「独自の方法」が飛躍的に多様化し、提供手段の差別化がそのまま異業種として脅威になる可能性もある。しかし、翻って考えてみると、消費者はこうした時代の到来を待ち望んでいたわけであるから、DXの広がりによりますます多様化し、合理的な方向に進化することが期待される。

なぜなら、手法としては稚拙でも、その時代ごとに工夫を凝らし、合理化への取り組みにチャレンジしてきた経緯がうがい知ることができる。例えば、中世期においては、戦で領地を勝ち取り拡大することが、自国を豊かにする最大の方法であった。そのため、いざ戦いとなれば大勢の兵を確保しなければならないが、平時から召し抱えておくと人件費が増大なものになり、不採算な事業になる。そこで、大名が考えたのが、平時には少数精鋭で国を守り、有事には農民を雇いにわか兵士に仕立てるというやり方だった。「貨幣」を発明したのも合理的思考の表われである。

古代から脈々と受け継がれてきた好奇心=向上心が、AIというソリューション素材の発明を得て、これまで埋もれたままになっていた問題を解決する手段として活用する勢いは日を追うごとに加速するだろう。すなわち、これからのビジネスモデル開発は、この"提供法の開発"が主役になるだろう。ということは、大企業との間にあった大きくて高い壁(参入障壁)がそれほど苦にならない、いやむしろ、経営資源を持たざるがゆえに、身軽である中小企業に有利ともいわれる環境変化が進んでいくに違ない。

これまでのように、優れた品質の製品を開発し、価格競争力のある商品に育て上げ、その製品の有用性(商品を使用・消費することのメリット)を消費者に訴え、大量に消費する市場に参入するルートを開発する、といった気の遠くなるような頑張りが不可欠であったがため、その活動の無理が原因で、市場から退出せざるを得ない状況に追い込まれるというケースが多く、同じ土俵で戦うことは不可能に近かった。しかし、今は、前述した"属性戦略"が身軽さを武器にどんどん開発できる時代が到来しつつある。