事業戦略の策定-顧客は誰か

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これまでは、「誰に対して何を提供するのか」をテーマに議論を進めてきたが、実際に戦略を策定する局面になると、顧客は一人とは限らないことに気づく。例えば、七五三の着物を購入する場合、着る本人は子供であるが、購入の意思決定をするのは母親である場合が多いと思われる。また家庭での食材・総菜購入を決めるのは主婦であるが、料理を食べるのは家族である。このように、顧客は一人ではないことを理解する必要がある。

それだけではない。他にも異なるタイプの顧客が存在することを確認しておく必要がある。それは、「使用者」「購入意思決定者」「支払者」、それに、購買意思決定に影響を与える「友人」「職場などの準拠集団」「購買を許可する人」などである。許可する人とは、業務用の仕入発注に際して、複数の意思決定者が存在することもあるし、特に、高額の機器類を購入する場合は、一番影響力があるのはだれかを見極める必要がある。

通常製品・サービスの場合、顧客は一人であるが、友達や口コミ、SNSなども大きな影響力を持つため、どういう生活シーンで使用・消費されるかが、機能別戦略であるマーケティングでは重要な課題となる。また、これに許可者が加わるとさらに複雑になる。例えば、医薬品の場合、「患者」「医療機関」「医師」「医療保険機関」「薬局」「厚生労働省」といった複数の人や機関が介在し、時には患者の意思が反映されにくい場合もある。

消費財メーカーの場合で考えてみると、真の顧客と購買意思決定者の間に製品の評価軸にかなりの隔たりがあることが確認できる。ここでの顧客構造は複雑で、少なくとも流通ルートは3つある。①メーカー-ユーザー(消費者)、②メーカー-大規模小売業者-ユーザー(消費者)、③メーカー-卸売業者-小規模小売業者-ユーザー(消費者)である。すなわち、こうした顧客構造の中では6つの購買意思決定がなされていることになる。

例えば、第二のルートでは、メーカーの販売担当者大規模小売業者の仕入担当者・販売担当者・財務部門役員などのうち誰がキイマンなのかによって、仕入商品の評価軸が異なる。しかし、大規模小売業者⇔ユーザー(消費者)の場合は、比較的顧客の顔は見えやすいが、扱商品が生産材として仕入れるか消費財として仕入れるかによっても評価軸が異なるなど顧客の状況を十分に分析しなければ、顧客を特定できない場合がある。

つまり、顧客のセグメンテーションをMECEに行うことが求められるということになり、その場合の軸としては、①国、地域②法人(行政・民間)、個人、③業種、ビジネスモデル、企業規模、④年齢、性別、収入、ライフスタイルその他で分類し、それぞれの市場規模(数量・金額)を把握し、総需要を算出することで顧客の顔が見えてくる。そうすれば自社のポジションが明らかになり、どんな製品・サービスをどんな方向で提供すべきかが明らかになってくるので、戦略策定の方向性が浮かび上がってくる。