事業戦略の策定-競争ベンチマークで自社の競争力を測る:(1)自社・競合定量分析

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 ここでは、自社と競合を多角的に比較して、自社の競争力を検証する。用いる手法は競争ベンチマークである。これは、自社および競合(新規参入・代替品)を様々な視点から比較することで、自社の競争力を持っているかどうか(強み・弱みは何か)を明らかにすることである。基本的な分析の視点としては、①自社・競合定量分析、②バリューチェーン分析、③ターゲット顧客分析、④製品・サービス分析、などが挙げられる。そして、①~④すべての視点で競合と比較できた段階で、⑤KFSの抽出と充足状況評価を行って、業界における成功要因を抽出しておく。

(1)自社・競合定量分析

 競争ベンチマークでまず行うことは、「プレーヤー(自社・競合)間の定量的比較」である。基本的視点として⒜シェア、成長性(売上高や営業利益の成長等)収益性(営業利益率等)⒟損益構造(収益性の差異を生み出している付加価値やコストの比較)が挙げられる。①~③までは、表面的な分析に留まるため、それだけでは、なぜそのような数値になっているのかの要因が解らない。④の損益構造や、バリューチェーン分析、ターゲット顧客分析、製品・サービス分析によって、その要因を探ることができる。すなわち、①~③は競合との比較の「仮説」をつくる道具と位置づけられる。①~③を常に"仮説"をもって分析し、その仮説を検証するという流れで自社・競合定量分析を行うと考える。

.定量分析-⒜シェア

 シェアとは、市場規模に対する各社の売上高比率(もしくは市場数量に対する各社の販売数量比()を比較したものである。各社の製品がどの程度普及しているのかをみることができ、基本的に「これまでの競争力が高かったプロセス・製品だからこそ、普及している」と捉えられる。ある消費材業界の例で見てみると、近年トップシェアだったX社の市場全体のシェアは、Z社に抜かれて2位となってしまった。Y社にも追従されている状況である。シェアについては、セグメント別でも見ておくべきだ。X社は需要の減少している中価格帯と法人の超高価格帯でのシェアが高いため、環境の影響を大きく受けてしまったと考えられる。Y社は低価格帯でトップ、他のセグメントでは上位のシェアとなっており、全体で3位となっている。Z社は、需要の伸びている高価格帯でトップとなっていることもあり、全体トップとして位置づけられている。

.定量分析-⒝成長性と⒞収益性

 次に、成長性と収益性を見てみる。各企業の位置づけを明確にする方法として、「売上高成長率等の成長性」と「営業利益率や粗利益率等の収益性」の2軸で各企業をプロットする方法等が挙げられる。この手法によって、同じような特性を持った企業が集まってくる(必ず傾向が出るとは限らない)。うまくグルーピングすることによって、特定の特性を持った企業は同じような業績となっているといった傾向がつかめる。

 分析の結果、業界の傾向を見てみると、複数のグループがあることがわかったとする。低価格帯製品を主としている企業は、成長性は悪くないものの収益性は悪くなっている。おそらく、単価が下がっているためと考えられる。中価格帯製品や超高価格帯製品を主としている企業は、収益性はよいものの成長性は低くなっているためだろう。これは、中価格帯・超高価格帯ともに需要が減少しているためだろう。価格帯製品を主としている企業は、収益性・成長性共に高くなっている。この場合は、高付加価値製品であり、かつ需要がのびているからだと推測される。

.定量分析-⒟損益構造

 (c)収益性(粗利益や営業利益率等)を把握したが、なぜそのような数値なのかという理由はまだわからない。それを明らかにするために、各社の損益構造を分析してみる。競合間で比較して粗利益が高いということは、「高付加価値の製品(原価に比べて高単価の製品)を販売できている」「生産の効率等が高く、売上原価を抑えている」などの理由が考えられる。どのような要因かをたしかめる方法の1つに、各社の売上金額と売上原価を売上数量で割った、単価と単位原価の比較がある。他社と単位原価等が同等で単位原価が小さければ「売上原価が抑えられている」からである。

 なお、売上原価が大きい・小さいということがわかった段階で、どの原価項目の影響によるかを調べて特定しておく必要がある。次に、競合間で比較して営業利益率が高いということは「粗利益が高い」「販売費・一般管理費が低い」ことについては、売上で販売費を除して販売比率を求めて比較してみるべきだ。販売費が大きい・小さいことがわかった段階で、どの費用項目の影響によるのかも調べてみる。また、上記とは観点が異なるが、固定費・変動費を特定して損益分岐点分析をすることで、「販売量が十分かどうか」というような分析をすることも有益である。