そうした場合に用いられるのがPEST分析である。PESTとは、political(政治的)、economic(経済的)、social(社会的)、technological(技術的)の頭文字をとった造語で、マクロ環境を網羅的に見るためのフレームワークであるが、注意しなければならないことは、目的(アウトプット)を明らかにして行うことである。この分析に限らず、目的があいまいなまま、過去の傾向をつかまえるだけでは、戦略的思考が停止してしまう。
政治的環境要因としては、{法改正(規制強化・緩和)、税制、補助金、政府・官公庁の動向、公正取引委員会の動向、裁判制度、政治団体の動向、訴訟問題のトレンド、外圧、国際情勢(外交)}などがあげられるが、その背景には特に注意が必要となる。経済的環境要因では、{景気、物価、GDP成長率、金利・為替・株価の動向、産業構造の変化、個人消費・需要動向、輸出入の動向}などである。
また、社会的環境要因は、{人口動態の変化(年齢構成・世帯構成)、コミュニティ、価値観、ライフスタイル、世論・流行、教育水準、治安・安全保障、宗教・言語、自然環境問題}などがメインとなる。最後に技術的環境要因であるが、これには、{技術開発の動向、新技術の普及、特許の動向、企業・大学の研究機関の研究テーマのトレンド・(R&D、自社関連技術、代替技術の動向)などが注目されるであろう。
市場における自社のポジションを知るためには、業界全体の販売額に対する自社の販売額の割合(シェア)を調べるというのが常套手段である。しかし、これをどのように活用するかということになると、単にポジションを把握しただけでは殆ど意味がない。現在のポジションを確認することは、今後の戦略策定に向けての第一歩に過ぎない。
現在のポジションに甘んじているのは、自社が提供している製品やサービスの品質のみに限らず、競合相手や供給業者、顧客、新規参入、代替品などの力関係によって制約を受けているからである。この環境分析がポーターの5フォースというフレームワークであるが、中小企業の場合はあまり踏み込んだ活用がされていないように思われる。というのは、卸売業などを例に考えてみると、まず顧客の力は絶対的なもので品質価格ともに要求水準は高いのが当たり前である。
ここで大手の競合企業と競り合うという環境を考えただけでも、自社が優位に立つことなどあり得ないと考えざるを得ない。供給業者との関係にしても自社の存在感は極めて低いことを認めざるを得ない。つまり、改めてファイヴ・フォース分析をするまでもなく、こうした環境下に置かれていることが、市場における現在のポジションを決定づけていると信じ込んでいるため、自社のUVP(独自の提供価値)を見つけ出すに至っていないことが多い。 それは明らかに分析力の甘さが原因であることを知らなければならない。
弱み強みとは本来原因であるべきはずなのに、分析者はえてして結果を強み弱みと捉えている場合が多い。例えば、売上高が低いのは、販売力が弱いということが弱みなのであり、売上が低いのはその結果であるとすれば、さらにその原因を掘り下げてみるのが分析である。結果を原因と見誤ってしまうことにより、その背後に潜む原因が見えてこなくなるので、競合相手や供給業者、顧客の力が強いということを実感するだけで、そうした力関係を形成している因果関係にまで踏み込めない。ファイヴ・フォース分析とPEST分析を組み合わせてみることで、全てが弱みではないことが見えてくることもある。