予測不能性{6.無作為を実現する方法}

 

 フォークボールと速球を、同じ割合で無作為に混ぜるようにいわれたらどうすればよいだろうか。一つの方法として、1から10までの数字を無作為に選ぶというものがある。例えばもし数字が5以下だったら速球を投げ、六以上だったらフォークボールを投げる。しかし、この方法は問題の次元を一つ下げただけに過ぎない。どうやれば、1から10までの数字を無作為に選べるだろう。

 コインを無作為に何回か投げたとき、その裏表がどのように現れるかを予想して書いてみるという、もっと単純な問題を考えてみよう。もし無作為性が本当に保たれれば、表と書いたか裏と書いたか、書き並べたものを一回ずつ推量した場合の的中率は50%を越えないだろう。しかし、無作為と思える表裏の結果を書き出すというのは、想像するよりはるかに難しい。

 心理学者は、表が出た後、次に表が出るのは裏が出るのと同じ確率だということを、人々は忘れがちだと報告している。それゆえ、人がコイン投げの結果を推量するとき、表が連続している箇所は少なく、表裏の交替が起こる箇所が多くなる。もし、狂いのないコインを使ったとき、30回表が続いても次の1回が表である確率は表が出る確率と等しい。表の打ち止めなどということはないのだ。

 同じように、宝くじでも先週のあたり番号が今週当たりになる確率は、他の番号と同じである。無作為の中に秩序だった順番性を持ち込まないためには、客観的あるいは独立のメカニズムが必要とされる。そのようなメカニズムとして、秘密で複雑、見破るのが難しい何らかのルールを作る、というものがある。例えば文章の字数もルールにできる。もし文章の字数が奇数だったら表にし、偶数だったら裏にする。

 これは、無作為性の作り出すルールとなりうる。直前の10の文章について試してみると(句読点を除く)、裏表表裏裏表表表表表、という結果が得られる。例えこの本が携帯に不便だったとしても、心配するには及ばない。無作為性を生み出すものはいろいろある。友人や親族の誕生日を使うこともできる。偶数の日なら表を、奇数の日なら裏を対応させる。あるいは時計の秒針を利用するのも一計だ。

 時計が完全には正確でないとすれば、他のだれにも秒針の現在の位置はわからない。5050で球種をミックスさせなければならないピッチャーには、一回ごとの投球の直前に腕時計を見ることを薦めたい。もし秒針が偶数を指していたら速球を投げ、奇数を指していたらフォークボールを投げる。ちなみに秒針は様々なミックスに使用できる。速球を40%、フォークボールを60%のミックスにしたいときには、秒針が1から24の時は速球、25から60のときはフォークボールをなげればよい。