予測不能性{5.相手の技術が変化したときに、自分の最善のミックスを変化させる方法}

 

 レシーバーがバックハンドのレシーブを練習して上達し、予想があたったときのバックハンドでのリターン成功率が60%から65%に向上したとしよう。図(省略)を修正してレシーバーの新しい最善のミックスを求めることができる。変更となる数字は以下のようである。レシーバーがフォアハンド側へ動く割合が30%から33.3%に上昇し、全体のリターン成功率は48%から50%にまで上昇する。

 レシーバーの技術が上達すれば、成功率も上がることは直感的に明らかだろう。しかし、全体の成功率の上昇が、上手になったバックハンドの割合を減らすことで達成される、というのは驚くべき結果ではないだろうか。第1章のホットハンドの話でこのことの可能性を示唆した。そのメカニズムを見てみよう。

 メカニズムの根底には、二人の選手の戦略が相互に関連付けられていることがある。レシーバーの(予想的中時の)バックハンドがよくなれば、サーバーはフォアハンドをより狙うようになる。(40%のかわりに43%)。それに対応してレシーバーもフォアハンドを予想して動く率が高くなる。バックハンドがよくなったので、得意のフォアハンドの出番がふえたのだ。ラリー・バードのときも同様で、左手でのシュートがうまくなったのでディフェンス側は守り方を変え、かえって右手でシュートを打つ機会が多くなるという事態が生じる。

 同種の現象で別の例もある。レシーバーからもっと敏捷に動くことを修得し、最初にフォアハンド側に構えたのに、サービスがバックハンド側にきた場合のリターン成功率がよくなったとしよう。

 この数字が20%から25%に上がったとする。すると、再び、レシーバーのフォアハンド側への動きは30%から31.6%に上昇する(ウィリアムズの方法を使えば、フォアハンドとバックハンドへの動きのミックスは3070から3065に変化する)。レシーバーは逆を突かれてもよくなったので、フォアハンド側に動く割合が多くなる。一方、サーバーはより多くバックハンド側を狙うようになるのだ。