もし、片方の側が均衡となる無作為ミックス以外の行動をしていることが知れた場合、もう片方の側は、それを自分に有利になるように使うことができる。テニスの例では、サーバーが40%のフォアハンドと60%のバックハンドをミックスさせる均衡戦略をとったときに、レシーバーは48%のリターン率となるのであった。もしサーバーがそれ以外のミックスを使えば、レシーバーは成功率をあげられる。
例えば、サーバーが、レシーバーの弱いバックハンド側だけを狙えば、レシーバーはそれを待ち受け成功率を60%に引き上げることができる。一般的に、レシーバーがサーバーのことを知っていて、サーバーの弱点をわかっていれば、レシーバーはそれに応じた行動をとることができる。しかし、サーバーがうわての戦略家で、重要でないゲームではわざと最適のミックスを使わずに、レシーバーを騙して偏らせた行動をとらせ、本当に重要なゲームでは逆を突いてくる、という危険も存在する。
サーバーが均衡のミックスから乖離していることにつけ込むためには、レシーバーも均衡のミックスから離れなければならないが、それは逆に、レシーバーがサーバーに搾取される可能性を生む。サーバーの明らかに程度の低いミックスはまやかしの恐れがある。しかし、自分の均衡ミックスをキープすればこの危険は避けられる。ミックスが適当な割合であることと同様に、無作為性の形状もまた重要である。
もし、サーバーが四回フォアハンドを狙い、次に六回バックハンドを狙い、次にまた四回フォアハンドを狙い...といったやり方をすれば、これは正しい割合ではあるが規則的な行動となり、レシーバーに読まれてしまうであろう。レシーバーは的確に動けば(4/10)×90%+(6/10)×60%=72%の成功率を上げることができる。サーバーが効果を最大にするためには、一本一本のサービスを予測不能にしなければならない。野球の話でのスミス氏とディクストラ氏はこの原則をわかっていなかったようだ。