予測不能性{2.テニスの駆け引き(4)}

 

 次に同じ問題をレシーバーの側から見てみよう。レシーバーは自分の最小利得(最も不利な場合にも最小限度確保できる利得)を最大化しようとする。もしレシーバーがフォアハンド方向とバックハンドの方向を均等に予想して動けば、その時の成功率は二つの直線の平均となり、図7-6(省略)では細かい線で示される。この線は右上がりなので、左端の値が最も小さくなり、40%の成功率が最小値となる。

さて、レシーバーがフォアハンドとバックハンドの動きをどのようにミックスさせても、そのミックスに対応してリターン成功率を表す線は、サーバーが4060のミックスを使える以上、成功率48%の点を通らなければならない。もし、その線に傾きがあれば、どちらかの端は48%より低くなる。レシーバーが動きを3070にミックスしたときだけ、その線は水平になり、その場合の最小値は48%となる。かくして最大の最小と最小の最大は48%で等しくなる。

最小最大定理の一般的な証明は非常に複雑だが、結果は役に立つので覚えておくと良いだろう。両者が最善のミックスを使ったときの片方の得、あるいはもう片方の損を知りたいときは、ただ、両方のうちの一方の最善のミックスを計算し、結果を求めれば十分である。ウィリアムズの方法やここで用いたい図は、二つの選択を持ち二人のプレーヤーによるゼロサム・ゲームの分析には有効である。

しかし、これらの手法はゲームがゼロサムでなかったり、三人以上のプレーヤーがいたり、プレーヤーに三通り以上の選択がある場合には使用できない。経済学者は、非常に複雑なゼロサム・ゲームの均衡条件を解明するために、線形計画のような一般的手法を編み出している。そうした一般的手法はこの本の扱う範囲を超えているが、得られた結果を使うことはできる。ミックス戦略の均衡の一般的特徴として、均衡点においては当事者の各々は自分選択についてどれを選んでも同じ結果になるということがある。

ミックスが必要なケースでは、均衡となる自分のミックスを見つけるには他人がどの選択を行っても、その結果がその他人にとって同じ利益となるようにすればよい。これは後ろ向きのように聞こえるかもしれないが、ゼロサム・ゲームにおいて無作為化を進める理由と完全に一致する。ゼロサム・ゲームにおける無作為化の理由は、相手がこちらの体系的な行動を利用するのを防ぐことにある。

 逆にもし、相手にある特定の行動の割合が多い場合にはこちらはそれにのることができる。ここまでミックス、あるいは無作為戦略を使う利点、および戦略的必要性を説明してきた。相手が有利になるような体系的行動をこちらがとらないように、偶然を活用するというのが基本的な考え方であった。この考え方を実際に使用するには、さらに細かい考慮が必要である。次の五つのセクションをミックス戦略のミニ・ユーザーガイドとしよう。