予測不能性{2.テニスの駆け引き(3)}

 

 今度は同じゲームをレシーバーの観点から眺めてみよう。再び図7-4(省略)を使って説明するが、図中の数字は次のような意味を持つ。もしサーバーがバックハンドを狙って打った場合、レシーバーがバックハンドを予想して動けば60%のリターン成功率である。また同じ場合に、レシーバーがフォアハンドを予想して動けば20%のリターン成功率である。レシーバーがフォアハンドを予想して動く割合を0%から100%まで変化させていくと、その時のリターン成功率は、この60%と20%の成功率を結んだ線であらわされる。

 同じようにして、サーバーがフォアハンドを狙って打つ場合のレシーバーのリターン成功列は、30%と90%を結んだ線であらわされる。この二つの線はレシーバーがフォアハンドを予想して動く割合が30%のところで交差する。そして、その地点でサーバーがフォアハンドを狙おうがバックハンドを狙おうが変わらない48%のリターン成功率が得られる。レシーバーがこれ以外の点を選べば、サーバーはフォアハンド狙いかバックハンド狙いかのいずれかの戦略をとることで、リターン成功率を48%以下にすることができる。

 ウィリアムズの方法はここでも有効である。図7-2(省略)からレシーバーの予想毎のリターン成功率の差を求めてみる。レシーバーがフォアハンドを予想して動いた場合は、リターン成功率の差は902070である。同様に、レシーバーがバックハンドを予想して動いた場合は、差は603030となる。最善のミックスは、この割合を逆の順にしたものである。つまりレシーバーは、30%はフォアハンドを予想して動き、70%はバックハンドを予想して動くのがよいという結論に達する。

 二人のプレーヤーの最善のミックスをそれぞれの観点から別々に計算して求めたが、興味深い特徴に気づかれただろうか。二つとも48%という同じレシーブ成功率に至った、という点である。レシーバーが自分にとって最善のミックスを使うと、サーバーが自分とって最善のミックスを使ったと、サーバーが自分にとって最善のミックスを使ったときと同じ成功率になる。これは偶然ではなくて、お互いの利害が完全に対立する二人のプレーヤーが行うゲームに共通する特性である。

 この結果は最小最大の定理と呼ばれ、プリンストンの数学者だったジョン・フォン・ノイマンとオスカー・モルゲンシュテルンが先駆をなした。この定理は、当事者利害が完全に対立する(片方の得は他方の損)ゼロサム・ゲームでは、片側は、相手の最大利得が最小になるようにする、というものである。当事者がそのように行動すると、最大利得最小(最小・最大)は、最小利得の最大(最大・最小)に等しい、という驚くべき結論が導かれる。どちらの側も、それ以上、自分の立場をよくすることができないので、この戦略によりゲーム均衡に達する。

 この結論を、当事者の各々が二つの選択しか持たない場合に、先ほどのテニスの例を用いてみよう。まず、サーバーがレシーバーの最大リターン成功率を最小にしようとするなら、サーバーは、レシーバーがサーバーのミックスを正しく予想し、それに最適に反応すると仮定する。すなわち、レシーバーのリターン成功率は図7-5(省略)の二本の線のうちの数値の大きいほう(上に位置するほう)であらわされる。最大の最小化は二本の線が交わったところで起こり、48%の成功率である。