予測不能性{2.テニスの駆け引き(2)}

 

 この結果はサーバーにとっては一つの前進といえる。というのもサーバーがいつも同じ方向を狙えば、レシーブの成功率は90%(いつでもフォアハンドを狙う場合)60%(いつもバックハンドを狙う場合)だからだ。次の疑問として、サーバーの裁量の選択は何かというものが浮上してくる。この疑問に答えるために、図7-3(省略)を使ってサービスを様々にミックスした場合の結果を見てみよう。

 サバ―がフォアハンドを狙う割合を0%から100%まで、左から右に水平に表示する。図の二本線(省略)はサービスのそれぞれのミックスに対応して、レシーブの成功する確率を示している。一本はレシーバーがフォアハンドを予想した場合、もう一本はレシーバーがバックハンドを予想した場合である。例えば、レシーバーがフォアハンドを予想した場合、サービスのフォアハンドのミックスが0%(すなわち全てバックハンド)のときはレシーブの成功する確率は20%、また、サービスのフォアハンドのミックスが100%のときはレシーブの成功率は90%となる。レシーブの成功する確率は20%から90%まで直線で結ばれる。

 二本の直線はサーバーがフォアハンドのミックスを40%にしたところで交わる。この点より左側(サーバーのフォアハンドのミックスが40%以下)では、レシーバーは、サービスがバックハンドの方向にくることを予想して動いた方がリターンの成功率が上がる。一方、この点より右側(サーバーのフォアハンドのミックスが40%以上)では、フォアハンドを予想した方が、リターンの成功率は上がる。

 フォアハンドとバックハンドのサービスを40%対60%にミックスさせた場合にだけ、レシーバーがどちらかを予想してリターンの成功率を上げるのを防ぐことができる。このミックスにおいては、レシーバーのリターン成功率はフォアハンド、バックハンド、どちらを予想しても同じ48%になる。サーバーがこれ以上のミックスを行えば、レシーバーは、フォアハンドかバックハンドかのどちらで待つかを的確に決めることで、リターン成功率を上げられる。図(省略)では、二本の線の上方に位置する部分をつなげた線がリターン成功率を示し、その線は常に交点より上方にあるので、成功は48%以上となる。したがって、フォアハンドを40%ミックスさせてサービスを行うのがサーバーにとって最良の選択である。

  このミックスは、サーバーの狙い、レシーバーの予測から組み合わされてできる四つの数字によって定まる。プレーヤーの絶対的、相対的な技量が違えば、ここに出てきた90603020、といった数字も違い、最善のミックスも異なってくる。後のほうで、このような違いに関する、ちょっと驚く結果を見てみよう。ここでは、実際のゲームにおける四つの数字を推測することで、自分にとって最良のミックスを知ることができるのをポイントとしてあげておく。

 さて、最良のミックスを知るために簡便法を使えば、図を書かなくても求めることができる。それは、J.Dウィリアムズの方法である。図7-2(省略)の四つの数字を見てみよう。サーバーがフォアハンドを狙ったときの、レシーバーのリターン成功率は、予想に応じ90%か30%である。そしてこの差をとると、903060という数字が得られる。同じことをサーバーがバックハンドを狙ったときにも行い、602040、という数字を得る。この二つの数字を逆の順番に並べたものが、フォアハンドとバックハンドの最善のミックスである。サーバーはフォアハンドとバックハンドを4060のミックスで狙うのがよいということになる。