小学生ぐらいの子供がよくやる遊びに「指合わせ」というものがある。まず、片方が偶数を、もう片方が奇数を選び、三つ数えたところで両者は一斉に指を一本か二本出す。もし指の数の合計が偶数なら偶数を選んだ人の勝ち、奇数であれば奇数を選んだ人の勝ちというものである。さて負けた人は勝った人に一ドル払うと仮定してみよう。両者の戦略に応じ、金銭のやりとりは次の図7-1(省略)のようになる。
両者がランダム(無作為)に行動しない限り、このゲームに均衡はない。奇数を選んだほうが確実に指を一本出すと想定するとどうなるだろうか。偶数を選んだ側は常に一本を選ぶだろう。ここで論理は先へ先へと進んでしまう。奇数を選んだ側は相手が指一本でくるとわかっているので、自分は二本を出す。その場合奇数を選んだ側は指二本を出す。その場合奇数を選んだ側は一本出すということになり、最初の状態に戻ってしまう。この論理の循環には終わりがない。
無作為が必要かどうかをチェックする簡単な方法として、相手にこちらの行動を前もって知らせると自分が不利になるかどうかを調べることがある。予測不能性が求められるのは、先手を取って行動すると損をするときである。「指合わせ」で先に行動したらどうなるかを考えてみると、いつも負けてしまうことがわかる。
ところで無作為なら何でも良いというわけでもない。奇数を選んだ側が75%の確率で指一本を、25%の確率で指二本を出す場合を考えてみよう。偶数を選んだ側では、その場合、指一本を出せば75%の確率で勝ち、25%の確率で負けるので、平均するとゲームから0.75×1+0.25×(-1)=0.5(ドル/ゲーム)の収入が期待できる。同様に指二本を出せば、偶数を選んだ側は0.5(ドル/ゲーム)の損失が見込まれる。したがって、偶数を選んだ側は25%よりも多い確率で、指二本を出すことになるだろう。75対25の割合は、相手の戦略を考慮に入れるといつまでも続かない。
無作為にも均衡を生じるパターンがあり、計算によって求めることができる。指合わせのゲームでは、ゲームの構造が対称形を成しているので、均等を生じさせる割合は両者にとって50対50のミックスである。このことを確かめてみよう。奇数を選んだ側が指一本と二本を同じ割合で出せば、偶数を選んだ側は指一本出そうが二本を出そうが平均して0.5×1+0.5×1+0.5×(-1)=0.5の収入を予想できる。したがって、偶数を選んだ側は指一本と二本を50対50の割合で出すと、やはり平均0の収入を期待できる。
この議論の立場を逆にしても同じなので、二人とも50対50の割合にするのがお互いに一番良く、そこが均衡点ということになる。この均衡解は「ミックス戦略」と呼ばれ、両者が無作為な行動をとることが必要な状況に対応している。より一般的な場合におけるミックス均衡は、ゲームが対称の場合ほど明らかではない。しかし、ミックス均衡を計算するための法則がある。予測不能性が重要な役割を果たすゲームの例を用いて、この法則を探ってみよう。