労働者側が5%以下の賃上げはとてものめないと主張するとき、会社側は労働者が4%の賃上げを折れて受け入れるべきだろうか。テーブルの上に現金をちらつかせれば、再交渉の芽も生まれてくるだろう。労働者側の状況は、代わりに交渉してくれる代理人を立てることで改善される。労働組合のリーダーが交渉にあたる際、彼の立場は自由きままというわけではない。
彼は約束を守ることを強制される。さもなければ組合員の支持をしなう恐れがあるからだ。労働組合のリーダーは組合員から条件付きで委任される場合もあり、また、世間に妥協しないと宣言することで権威を強める場合もある。結果として、労働組合のリーダーは拘束つきの委任を受けた交渉代理人ということになる。彼が交渉者として働けるのは、代理人としてである。
したがって、最終的に労働契約を推進するのがリーダーではなく、労働者自身である限り、彼には妥協する権限がそもそもないケースも存在する。あるいは、妥協して解任される可能性もある。実際、実行の確約を達成するにあたっては、目的とともに手段も考えてみることが大切である。もし、労働組合のリーダーが、ある立場をとって面子を失うような事態になったとして、彼が何の拘束もなく勝手にその立場を打ち出したときと、外から強制されてその立場になったときでは扱いが異なるだろう。
列車を止めるため自ら線路に身を投げ出した人と、意志に反して線路に縛りつけられた人では、後者のほうがより哀れみを誘うかもしれない。別のタイプの交渉代理人として機械がある。自動販売機相手に値切る人は非常に少ないし、それに成功する人はもっと少ない。これで一応、実行の確約を導くための八つの方法を説明したことになる。現実のケースでは複数の方法を併用することが多いので、次に二つの例を取り上げてみよう。