実行の確約{1.信頼性への八つの道 ■チームワーク}

 

 実行の確約を達成するために他人が助けになるということもしばしば見られる。人は自分一人では弱くても、グループを組むことで力を得ることができる。禁酒連盟は、他人からプレッシャーを確約達成のために有効に使っているものとして有名である。禁酒連盟は確約に背くと大きな損が出るような仕組みをとっていて、禁酒の誓いが破られると、誇りや自尊心が失われる制度を確立している。

 ときにはチームワークは社会的な圧力の段階を遥かに超え、約束に是が非でも従わせる強力な武器となることもある。突撃する群隊の最前線を考えてみよう。もし、全員が突撃を命ぜられても、ある兵士が少しだけ遅れれば、その兵士は攻撃が成功する確率をほとんど下げることなく、自分は助かる確率を大きく上げることができる。しかし。もし全員が同じように考えれば、突撃は後ずさりになってしまう。

 実際はそのようなことは起こらないだろう。兵士は祖国への栄誉や、仲間の兵士に対する忠誠や名誉の負傷をよしとする信念に動機づけられているからだ。(ところで、名誉の負傷だが、動けなくなって無事に本国送還になるが、回復不能ではないほどの傷というのはどうだろうか)。さて、突撃命令に従う意思や勇気に欠ける兵士は、命令放棄に対する罰則によって動機づけされなければならない。

 例えば、命令放棄に対する罪が確実で不名誉な死であれば、前進する方がずっとましであろう。しかし、兵士は命令放棄者といえども仲間の兵士を殺すことに積極的ではないと思われる。敵を攻撃するのも定かではないかもしれない兵士たちに、命令放棄した仲間を殺すことを強いるにはどうしたらよいだろうか。

 古代ローマ軍では、攻撃に落伍した者を極刑に処した。兵列が前進するとき、隣のものが落伍するのを目撃した者は直ちにその落伍者を殺すよう命令されていた。この命令を確実にするため、落伍者を殺すことに失敗した者も極刑に処された。したがって隣が落伍すると、軍勢とともに戦闘に参加したくても落伍者を追いかけて殺さないと自分の命が危ういのであった。

 このローマ軍の手法は、今日、ウエスト・ポイント名誉規律に生きている。ウエスト・ポイント(アメリカの陸軍士官学校)では、試験官はおらず、しかしカンニングは放校となる罪である。だが、学生は同級生のことを告げ口するのは気持ち良いものではない。そこで、カンニングを目撃して届け出ないことも名誉規律を破るものと決めている。この罪も放校に値する。それゆえ、カンニングが起こると学生は、沈黙することで自分も共犯とされたくないので届け出ることになる。刑法も犯罪の届け出を怠った者を、事後重版に処する規定を準備している場合がある。