取引が大きいとき、当事者はお互いに相手を信頼しない可能性がある。しかし、もし実行の単位を十分小さくすることができれば、信頼性の問題は自然に解決する。脅しや約束は細かい部分に分けられ、各々が別々に扱われる。泥棒の間の信義も、もし彼らが一時にお互いを少しだけ信頼しなければならないのであれば存在しうる。
100万ドルと1キロのコカインを交換するのと、一回のコカインの取引額を1000ドルに抑えて、1000回取引を行う場合を考えるとよい。100万ドルであれば、相手を裏切るのに価値があるかもしれないが、1000ドルの利益ではあまりに少な過ぎる。かくして儲かる関係を継続することになる。
大規模に確約を行うことが不可能なときは、少ない量で何回も行うのが得策であろう。例えば、発注者と業者はお互いに疑心暗鬼の関係にある。発注者は前払いして不完全や手抜きの工事をされるのを恐れ、業者は仕事を完成した後、発注者が払ってくれないのを恐れる。それで毎日あるいは毎週、仕事の進み具合に応じて支払いをすることが行われる。最悪でも、どちらの側も一日あるいは一週間分の仕事相当分を失うだけで済む。
瀬戸際戦略と同様に、小さなステップに分解して行動するのは脅しや約束のサイズを減少させ、確約の規模を引き下げる。ここで注意すべき点を一つ挙げておこう。戦略的思考を理解する人は、先読み推量して最後の段階を心配する。もし、最後の段階において裏切られると予想するなら、その一つ前の段階で関係を壊すのが得だからだ。
しかし、そうすると最後から二番目の段階が最後の段階になり、問題は再燃する。信頼が破綻するのを防ぐためには、明確な最後の段階があるのは不都合である。ビジネスを継続する可能性がある以上、裏切りは得にならない。したがって、これが奴の引退前の最後の取引だと囁かれたときには用心したほうがよい。