起業を考えるときに陥りやすい間違い

 

 ものごとは計画通りにいかないものです。だから経営計画など立てても意味がないと考えている経営者もたくさんいます。しかし、何の勝算もなく起業に踏み切れば、経営を継続するのは難しくなる可能性が高いのも事実です。起業して成功したかどうかの評価は、人それぞれですが、少なくとも、投下した資本と労力を上回る収益(売上・利益)が実現できなければ、事業で成功したとはいえないでしょう。企業経営は、継続することに意義がるといわれますが、継続できる条件はそれだけではありません。

 今世界中に蔓延している新型コロナウィルスの影響で、企業が一番苦しんでいるのは資金繰りであることは企業経営者のみならず、サラリーマンや子供でも実感しているはずです。もしも、収支だけが問題であれば、今のような状況下でも、売上が望めないのであれば、操業をストップすれば、原材料や商品の仕入れも必要ないし、従業員も解雇すれば、収支がゼロになり、とりあえずは、資金繰りに苦しむことはないはずです。もちろん、そんなことはあり得ません。収支のタイミングとキャッシュフローとは別物だからです。

 もちろん収入と資金は密接な関係はありますから、このメカニズムをしっかり把握しておくことが必要です。これを前もって図式化しておくのが経営計画です。この計画が現実に即したものであれば、計画通りに経営が進んでいるということになるでしょうし、計画通りにいかないときは、まず、資金繰りに影響が出ます。つまり、資金(お金)は企業の血液といわれているのはこうした意味で、人間と同じで理由はともあれ、資金繰りが続かなくなると企業経営は成り立たなくなってしまうわけです。

 本日の主題である「起業を考えるときに陥りやすい間違い」というのは、そのことです。起業するためには、まず、お金という条件が整っていることが必要不可欠です。次に考えなければならないのは、顧客や商品、販売の仕方、人材といったところでしょうか。もちろん、とりあえず起業をして見ようという動機を否定するものではありません。なぜなら、人は何らかの動機がなければ、どんなに条件が整っていたとしても、起業に足を踏み入れることはないからです。だからこそ、その動機は無駄にさせてはいけないのです。

 ただ問題なのは、ここで挙げた諸条件や起業しようという動機だけでは、経営組織は稼働させることはできません。なのに、何の勝算もないまま起業してしまう。このブログ読んでいただいている皆さんには、この危うさはご理解いただけますよね。起業したい人が千人いたとして、起業できる人はその1/10にも満たないのに、起業後10年存続できる企業はほんのわずかという現実を見ると、「とりあえず」という動機」の危うさが解ります。

それにも関わらず、国は開業率を上げることにのみ力を入れています。

 もちろん、起業を後押しするための支援施策も近年は充実してきました。しかし、「誰のどういうニーズに対して、どんな商品を、どんな方法で」提供したいか? そして、それを実現するためには、「どんな投資」が必要で、「どんな人材」が必要か、「資金調達は」といった基本的な要素について熟慮しなければならない。そのベースとなるのが、自分の個性(独自能力)であることを強調したいのです。