実行確約{1.信頼性への八つの道}

 

 戦略活用行動に信頼性を与えるのは優しいことではない。しかし、それはまた不可能なことでもない。この問題を最初に第5章で扱ったとき、戦略活用行動を信頼性のあるものにするためには、裏づけとなる証拠として機能する所作が必要であると言った。そのような所作を実行の確約と呼んでいる。ここで実行の確約を達成する八つの方法を挙げてみよう。さとりの境地に到達するための仏教の方法と同様、八通りのやり方を取り上げてみるが、その中から条件に応じて適当なものを選ぶのがよいと思われる。それらの方法は三種類の原則を裏づけとしている。

 最初の原則は、ゲームから得られる得失を変更することだ。確約したことを実行するのが、自分の利益になるような状況を作り出すのが狙いである。例としては、脅しを警告に変え、約束を確信に変えることが考えられる。いろいろなやり方があるが代表的なものとして、

① 評判を確立し、それを利用する。

② 契約を締結する。の二つである。両者とも確約したことを破ると、実行した場合より高くつく、という工夫が盛り込まれている。

 二番目の原則は、確約したことから後戻りできる余地を減らすようにゲームのやり方を変更することである。この躊躇に属するものを三種類併記しておく。中でも一番虚誕なものは、状況から自分自身を隔絶させるか、退路を断つかして後戻りの可能性をなくすことだ。また、意思決定プロセスから自分を排除し、結果を偶然に委ねるというやり方もある。それらは、

③ ゲームやゲームの関係者との情報交換、接触を遮断する。

④ 退路を完全に除去する。

⑤ 成り行きを天にまかせる。

というものである。

 最初と二番目の原則を組み合わせて、ゲームからの得失ととりうべき行動の両方を変更することも可能である。実行の確約を多数の小さな部分に分割できるときには、裏切りによって得られる一回の利益より、裏切りによって失われる残りの部分からの利益の方が大きくなる場合がある。かくして、

⑥ 小さなステップに段階を分けて行動する。

というやり方が得られる。

 三番目の原則は、実行の確約を守るために、他者を介在させるというものだ。団体で行動すると、1人のときより信頼を確保しやすい。あるいは、自分の代理に他人を雇うこともできる。

⑦ チームワークを通して信頼性を生み出す。

⑧ 代理人に交渉させる。

という方法がある。