特赦を定期的に実施することを妨げる要因はない。すると問題が生じる。将来特赦の可能性があるので、税金をごまかす誘惑がますます強まるのである。議会は税の特赦を繰り返すのを防ぐ道を考える必要がある。ロバート・バローとアラン・ストックマンはウォール・ストリー誌上に、政府は税の特赦を発表し、途中で約束を裏切り、名乗り出てきた人を訴追するという案を載せた。これは単純な特赦より増収に効果があるかもしれない。しかも、政府が特赦を反故にした後、だれが再び特赦を信じるだろうか。信頼性を破壊することで、政府はもう二度と特赦は行わないという言質を確実にできる。
この案は不当だと思うかもしれないが、それにはうなずける部分もある。まず第一に、この手法は戦略的な納税者には効果はないかもしれないということである。彼らは政府が約束を破ることを警戒し、特赦にはまったく参加しない可能性がある。さらに、もっと重要なことは、税のごまかしを捕らえることだけが政府の目的ではないということである。脱税の摘発には成功しても、この案では他の分野で政府の評価に傷をつけ、全体として損の方が大きいかもしれない。
評判を立てるのに際立った例を見せたているものとして、メイフラワー家具会社がある。マサチューセッツ有料道路沿いにその会社は大きな広告を掲げていて、その広告には百二七年間セールをやっていないと誇らしげに書いている。(最初の客がまだこないのか!?)この条件なしの宣伝文句は、毎日が安売りだと言っているわけで、その店には客が澱みなくやってくる。セールをすれば一時的には利益が上がるかもしれないが、このような印象的な広告をするためには、セールの後百二七年待つ必要がある。来年、この広告は百二八年に書き換えられることになっていた。
上記の各種の例で、チームの参加者は、将来の条件なしの行動、脅し、約束に信頼性を与えることを直接的、意識的な目的として評判を形成しようとした。しかし、評判は戦略的でないな目的からも起こり得、これも同様に信頼性の獲得に役立つ。例えば、前言を違えないのがプライドから来ている場合がある。トーマス・ホップスは約束事を守らせる手段として二つのものを示唆した。違反した場合に起こる結果の恐怖と、違反しないことへのプライド、である。
この種のプライドは教育や社会化の過程でしばしば人々の価値体系の中に組み込まれ、毎日の様々な関係を通して信頼性を構築するように働いている。前言を守ることにプライドを持つのは、脅しや約束に信頼性を与えて戦略的有利さを手に入れるためではない。前言を守ることそれ自体が良いことなのだと教えられている。また、狂っているという評判は、まともな人が言えば到底信じてもらえないような脅しを現実味のあるものとするという文脈では意味がある。
明らかな非合理性は、戦略的には良い合理性となりうる場合があるので、わざわざ非合理という評判を増幅することもある。狂っているように見えるのは、脅しを有効にするための戦略的狙いかもしれない。この原則をカダフィ大佐やホメイニ師は、彼らとの交渉にあたる西欧の、もっと理性的で冷静な政治リーダーたちより、よく知っているのだろうか。なんともわからないが、ひとつ言えることは、罰を与えようという脅しで制止することができない、無茶苦茶な非合理的な子供は、親よりも凄腕の天性のゲームプレーヤーだということだ。