ゲームの中で戦略活用行動を試みて、それを裏切れば、信頼性に関する評判を落とすことになる。もし、一生に一度というような状況であれば、評判は重要ではなく、あくまで確約を守の価値は小さいかもしれない。しかし、ゲームというものは、同時に複数の相手と、あるいは同じ相手と機会を変えて、何回も行うのが通常なので、評判を確立するのは意味がある。評判は戦略活用行動に信頼性を持たせる実行の確約として機能する。
1961年のベルリンの危機のとき、J・Fケネディは米国にとっての評判の重要性を力説した。「もし、われわれがベルリンを放置し、ベルリンに対する我々の決意の明かしとなる行動をとらなければ、われわれの将来の立場はどうなる。もしわれわれが普段、明言していたことに違背すれば、それらのことばのうえに築かれた集団安全保障体制は崩壊してしまう」。他の例として、イスラエルがテロリストと交渉しないという方針を確立させていることが挙げられる。これは、テロリストが身代金や囚人の解放と引き換えにするために人質をとることを防ぐのを目的とした脅しである。
もし交渉しないという脅しが信頼性のあるものなら、テロリストは人質をとっても無駄なことを理解するようになるだろう。その間、イスラエルの決意が試される。脅しで約束した行動を実行する毎にイスラエルは苦しまざるをえない。交渉を拒否することは、人質の命を犠牲にすることを意味するかもしれないからだ。しかしテロリストの要求をはね退けるたびに、イスラエルの評判と信頼性は高まる。一方、屈服することは、テロリストの現在の要求を入れるだけなく、テロの魅力度を将来にわたって引き上げることになる。
ところで評判を逆方向に使うゲームも考えられる。評判を壊すことが実行の確約を強化する場合である。ときには評判を壊すことで、あくまでも本来の趣旨に反する行動はとらないという姿勢を明確にできる。飛行機の乗っ取り犯と交渉するかどうかという設定を使ってこの点をみてみよう。実際にハイジャックが起きる前は、政府は乗っ取り犯とは決して交渉しないとしてハイジャックを防ごうとするかもしれない。しかし、もし乗っ取り犯の方で、いったん飛行機をハイジャックしてしまえば政府がその方針を貫くことはできないと読めばどうなるだろうか。
解決策の一つは、約束の信頼性を破壊することである。交渉の後、合意に達した取り決めを政府が破り、乗っ取り犯を攻撃したとしよう。これは、乗っ取り犯に対して誠実に対応しないという点では政府の評判を壊す。政府は、信頼が置けず約束を守れないとみなされ、乗っ取り犯の脅しに対して当事者能力を欠く、という烙印を押される。しかし、この約束の信頼性を失うことは、一方で交渉に応じないという方針の信頼性を上昇させることになる。
会議は、税の特徴に一貫性を与える有効なものにしようとする際、同様の問題に直面する。こういう税の特徴といのは、脱税していた人に、罰則なしで税を完済することを許す制度である。この制度は費用をかけずに税収を増加させる方法のように見える。税金をごまかすのを考え直した人は、修正し正規の税を払うので、もう特赦は行われないと広く信じられれば、付加的な税収が手に入る。しかし、もし税の特赦がこれほどよいものならば、どうして再び実施しないのだろうか。