今度は逆に、均衡点が一つもないゲームについて考えてみよう。ミサイルの話では、四つ残された組み合わせの中に均衡点はない。例えばイラクがI1でアメリカがA4という組み合わせでは、迎撃ミサイルははずれであり、アメリカは戦略をA8に変えたほうがよいことになる。しかしそれならイラクはI5に変更するべきであるし、そうなった場合にはアメリカはA4に変え、さらに今度はイラクがI1に戻り...と続く。
しかし、どちらかが一定の方法で選択を行えば、他方が有利になる。だから両者とも自分の選択を無作為にミックスする必要がある。ミサイルの問題では、両国にとって二つの選択肢の間に本質的な差がないので適当なミックスのしかたは明らかであろう。すなわち、アメリカはA8を50%ずつの確率で選択すべきであるし、イラクはI1とI5を50%ずつの確率で選ぶべきである。
このミックス戦略は両者が協調的なケースでもとられることがある。電話をかけ直すケースでは、両者が、かけ直すか待つかをコイン投げで決めるとして見よう。この無作為選択は、電話をかけ直す問題の第三の均衡といえる。もしこちらが電話をかけ直すとすれば50%の確率でつながり(相手が待っている場合)50%の確率で話し中になる(相手もかけ直していた場合)。
こちらが待つとしても50%の確率で電話がかかってくる。結局電話のつながる可能性は50%であり、両者がどういう行動をとってもつながる確率は変化しない。また、電話のつながる可能性は50%なので、平均二回の試みで会話が再開できることになる。ゲームによってはほど良いミックス比がこれほど明らかではない。第7章ではミックス戦略が必要なときに各行動をどのような割合で選択すればよいかを考察する。
ここで簡単に復習しておこう。同時進行ゲームにおける行動のルールには三つのものがある。第一は、絶対優位の戦略を探してそれを使う。第二は、絶対劣位の戦略を探してそれを消去する。第三は、均衡点を探してそれを用いる。次に以上のルールの応用問題を考察してみよう。