キャンポー社は、フェデレーテッド・ストア社(及びその子会社のブルーミングデール社)に最初のテイクオーバー(企業買収)を仕掛けた際、二段階ファーの作戦を用いた。このケース・スタディでは、戦略としての二段階オファーの有効性を検討する。この作戦は乗っ取り側に不当な利益を与えることになるだろう。二段階ファーとは、買収企業がターゲット企業の株式の買収価格を時期により別々に設定する方法である。
通常、第二段階目の価格は第一段階の提示価格より劣るので、株主には第一段階の条件で取引に応じるよう誘いをかけることができる。数字を簡単にするために、テイクオーバー前の価格は1株100ドルであるとしよう。第一段階の価格は105ドルで、発行済株式の50%までを買収するとする。第二段階では、残りの50%の株式に対して90ドルしか払わないことにする。公平を期するために、第一段階の応募者が50%を越えた場合には、買収済株式を105ドル相当の株式と90ドル相当の株式数で加重平均した価格を第一段階の価格とする。
第一段階の提示に応じなかった株主への買収価格は、配収が50%を越えテイクオーバーが成功した場合には90ドルになる。もちろん失敗した場合、100ドルのままである。もし応募者が50%を下回った場合には、応募者全員が1株当たり105ドルを得る。もし応募者がX%(>=50%)であれば、加重平均された買取価格は、105(50/X)+90(X-50)/X=90+15(50/X)ドルになる。
第二段階オファーの特徴としてまず、買収が無条件であること、すなわち、乗っ取りの成功・不成功にかかわらず第一段階で応募した株は第一段階の価格で買い取られることが挙げられる。また、この場合の二段階オファーでは、もし全員がオファーに応じると、1株当たりの平均価格はわずか97.5ドルとなりオファー前の価格を下回ってしまう。この価格は、ティクオーバーに乗り出す会社が他に現れることを期待するようになる。
実際、このケースではメーシーズ社が舞台に現れた。メーシーズ社は、条件付きのオファーを行い、株式の過半数を得た場合には、102ドルで買い取るというオファーを行ったとしよう。さて、どちらの会社に応募するのが良いだろうか。また、株式は広く分散されているとして、オファーに成功の見通しはあるだろうか。
《ケース・ディスカッション》
二段階ファーに応募することが絶対優位の戦略である。このことを確認するために、おこりうる三通りの状況について考察してみよう。
・二段階オファーへの応募が50%未満で、テイクオーバーが失敗に終わる場合
・二段階オファーへの応募がちょうど50%で、自分が応募すればテイクオーバーが成功、応募しなければ失敗という場合
・二段階オファーへの応募がちょうど50ドルで、自分が応募すればテイクオーバーが成功、応募しなければ失敗という場合
最初の状況では、二段階オファーは失敗なのでその後の価格は、メーシーズ社も失敗の場合は100ドル、成功の場合は102ドルになる。しかし、自分は105ドルを得られるのだからどちらにせよ有利である。二番目の状況では、応募しなければ90ドルしか得られないが応募すれば少なくとも97.5ドルは得られるのだから応募する方がよい。三番目の状況ではテイクオーバーの成功によって迷惑する株主もあるが自分は応募したほうが儲かる。なぜなら、応募はちょうど50%であるから自分は1株あたり105ドル弱を得られる。だから買収を手助けしたほうがよいことになる。
ここでは応募することが、絶対優位の戦略であるから全株主が応募するだろうと予測できる。全員が応募した場合、加重平均価格はオファー以前の価格を下回り、オファーによって、乗っ取り屋は会社の本当の価値以下で買収ができる。株主に絶対優位の戦略があるからといって株主が儲かるというわけではない。乗っ取り屋は第二段階オファーの金額を低く設定することで不当な利益を得ている。
通常は、二段階の金額を現在の株価より高めにすることで、二段階オファーの持つ強制的性格が明らかになりにくいことが多い。それでも、もしその会社がテイクオーバー後110ドルの価値があるなら、乗っ取り屋は第二段階のオファーを100ドル以上110ドル以下にすることがやはり不当な利益を上げているといってよかろう。法律家は二段階のオファーを応募の強要であるとして法廷で乗っ取り屋と論争を続けている。
ブルーミングデール社のケースではキャンボー社が二段階オファーから穏当なオファーに切り換え、結局買収に成功した。このケースで条件つきのオファーでは、無条件二段階オファーに対抗できないことがわかった。メーシーズ社のオファーが無条件であったならはるかに効果的であっただろう。無条件オファーであれば、キャンボー社の二段階オファーが成功するという均衡を崩すことができる。
なぜなら、すべての株主が二段階オファーが必ず成功すると思えば、期待加重平均価格は97.5ドルになりメーシーズ社の買収価格を下回るためである。だから株主は二段階オファーが失敗すると予測し、買取に応募しなくなる。1989年の暮れ、キャンポー社は過度の負債により倒産に至り、フェデレーテッドストア社は破産法11条の適用を受けた。キャンボー社の戦略が成功したというのはあくまでテイクオーバーに関して目的を達成したという意味であり、会社経営の成功はまた別の事柄である。