同時進行ゲーム{5.均衡点の過多・過小 ■均衡点が複数あるゲーム}

 

均衡点を用いれば、同時進行ゲームの堂々巡りを完全に解決できるだろうか。残念ながら答えはノーである。ゲームによってこのような均衡点が複数存在してしまうものもあれば、全く存在しないものもある。また場合によっては、均衡に至るためにはもう一段高度な考え方が必要なものもある。これらのゲームを説明とてゆこう。車は道路のどちら側を走るべきだろうか。この問いは絶対優位の戦略や絶対劣位の戦略の手法で解くことはできない。

しかしながら答えは単純そうに見える。皆が右側を走るのであれば自分も右側を走るのが良いだろう。「こちらがこう出れば相手はこうするだろうから...」式に考えてみると、もし「皆、右側を走るだろう」と他の人々が考えるとだれもが予測すれば、全員、右側を走るであろう。だから右側通行が均衡点である。しかし、イギリスやオーストラリア、日本は左側通行が均衡である。このゲームには二つの均衡点が存在していて、均衡という考え方だけでは、どちら側の通行が普及するか、または普及すべきかを言い当てることはできない。

ゲームに複数の均衡点がある場合には、プレーヤーはどれを選択するかについて共通の理解がなければならない。それがない場合には混乱が起こる。車の通行の例では、各国の法律が均衡の答えを与えている。しかし、ピーターからポーラへの電話が偶然切れ、どちらかがかけ直さなければならない場合はどうであろうか。もし、ピーターがポーラにかけ直すならば、ポーラは話中にならないように電話をかけずに待っている方がよい。

しかし、もしポーラもピーターも電話がかかるのを待った場合には、話しを再開できない。一方にとっての最善の行動は、他方の行動いかんにかかっている。このゲームでもピーターがかけ直しポーラが待つという場合と、ポーラがかけ直しピーターが待つという場合の二つの均衡点が存在する。電話が切れた場合の対処について社会的慣習、すなわち、どちらの均衡点を選ぶかについて共通の理解があれば二人の助けになる。

解決法の一つは、もともと電話をかけた方が一度かけ直すというルールだ。最初に電話を受けた側は電話を待つ側になる。この方法の長所は、もともと電話をうけたほうは相手の電話番号をわかっているとは限らないが、かけた方は確実にわかっているはずだということである。他の解決策としては、安いコストで電話をかけられる人が(例えばピーターは会社にいて、ポーラは公衆電話にいる場合)、かけ直すというルールが考えられる。

均衡点を選ぶテストとして次のような質問を出しておく。あなたは明日の何時かにニューヨークである人に会わなければならないとする。その人も明日あなたに会うことは知らされているが、両者とも何時にニューヨークのどこに行けばよいのかは知らされていない。さて、あなたなら何時にどこへ行くだろう。この質問はトーマス・シュリングの『Strategy Conflict』によって有名になった。

実は、この質問は、前もって決まった正解はなく、最も多数の答えがあればそれが正解となる。教室で試してみたところでは、正午にグランド・セントラル駅ら行くというのがもっと多い回答であった。プリンストンからニューヨーク行の電車はペン・ステーションに着くが、そのプリンストンの学生でさえ、この回答が多かった。